EUは、ウクライナ問題解決に向け、ロシアに対する追加経済制裁を行うことを発表した。ウクライナ情勢は、昨年の暴動発生により緊迫化し、3月にロシアがクリミア併合を宣言したことが引き金となり、ウクライナ政府とクリミア独立を求める反政府武装勢力との武力紛争にまで発展した。
欧州連合(EU)は5日、ウクライナ問題解決に向け、ロシアに対する追加経済制裁を行うことを発表した。ウクライナ情勢は、昨年の暴動発生により緊迫化し、今年3月にロシアがクリミア併合を宣言したことが引き金となって、ウクライナ政府とクリミア独立を求める反政府武装勢力との武力紛争にまで発展した。
現在に至るまでウクライナ政府と親ロシア派の反政府武装勢力との対立は続いている。EUは、ウクライナ問題の深刻化の原因として、ロシアによる武装勢力に対する軍事的支援が継続していることを指摘し、ロシアに対して支援の中止や事態の沈静化への協力を求めた。しかし、マレーシア航空の民航機撃墜事件や、対テロ作戦の名目で市民が殺害されるなどの事件が続発し、状況が改善されないことを受け、EUは今夏、ロシアに対する経済制裁に踏み切った。
これに対し、ロシア側は報復措置として制裁発動国に対する農産物禁輸を実施したため、EUと米国、ロシア間での経済制裁の応酬となっている。この結果、地政学リスク懸念のため、国際資本によるロシアからの資金引き上げの動きがおこり、現在までに1000億ドル以上の資産がロシア国外に流出したものと見られており、ロシアに対する経済制裁の影響が出た形となった。
ロシアのプーチン大統領は、8月には「ウクライナで起きている惨事を終結させるために全力を尽くす」との声明を発表し、一時は問題収束に楽観視する見方もあった。しかし、その後もロシア軍がウクライナ国境付近で大規模の部隊集結や軍事演習を行ったり、一部部隊によるウクライナ国内への越境が発覚するなどしており、今回のEUによる追加経済制裁を発動する合意に繋がった。
この合意に関連して、米国のオバマ大統領も経済制裁強化の準備が整っていると声明を発表、欧米対ロシアという構図がさらに強まる形となった。なお、現地ではウクライナ政府と反政府武装勢力との間に停戦協定が成立し、事態は再び沈静化への模索を始めている。しかし、この停戦が根本的解決に至るかについてはいまだ不透明であり、今回合意された追加経済制裁の効果がロシアの譲歩を引き出すかどうかについて、国際社会は注目を集めている。(編集担当:久保田雄城)