新設大臣補佐官に民間人 落ち込む議員たちの深刻な「大臣病」

2014年09月20日 10:55

 9月3日、安倍晋三首相は内閣改造を行った。新たな閣僚に注目が集まる裏で、一つの重要なポストが新設されたことはあまり知られていない。新設されたポスト、それが「大臣補佐官」だ。今回の第2次安倍改造内閣から、閣僚はそれぞれ1人大臣補佐官を民間人も含めた人材から任命できることとなった。

 大臣を補佐するポストである副大臣や政務官と大臣補佐官の最も大きな違いは、前者が省庁内での指揮命令権を持ち国会での答弁も行うのに対し、大臣補佐官は具体的な権限は持っておらず、あくまで閣僚のサポートに専念する点だ。若手議員の育成に役立つのではとの思惑もあったこのポストだが、菅官房長官が「基本的に民間人を」と注文をつけたことから、永田町では落胆する議員が多く生まれているという。

 内閣における民間人の登用はこれまでも議論を呼んできた。憲法では「閣僚の過半数は国会議員から選ばなければならない」と定められており、逆に言えば閣僚の半分は民間人でも良いということになるが、実際には民間人閣僚の誕生はまれで、現在の安倍内閣にも民間人は一人もいない。

 民間人の登用が進まない背景にあるのが国会議員のいわゆる「大臣病」だ。「大臣病」とは大臣ポストに執着する国会議員を揶揄した言葉で、今回の内閣改造で「待機組」と呼ばれる衆院当選5回以上の入閣適齢期の議員から「留任が多い」と不満の声が漏れ聞こえているのもこの「大臣病」の一つと言えるだろう。全員が国会議員の内閣でも不満が抑えきれないような状況なのだから、この病気はやはり深刻だ。民間人の入閣が進まないのも無理はない。

 米国では国会議員ではなく研究者や企業経営者など多くの優秀な人材を民間から引き入れ組閣を行う。制度の違いはあれど、国民のため最高の内閣を作るという目的は変わらないはずではないだろうか。最近活動を活発にしている増田元総務相や専門知識を生かして危機に対処した森本元防衛相など重要ポストを担う民間人閣僚が存在感を発揮したケースも多い。日本の問題は山積しており、民間の知恵を積極的に活用すべきなのは明らかだ。民間人登用の方針に落胆するなどもっての外。より優秀な民間人を推薦するくらいの気概を、日本の議員にも見せてほしい。(編集担当:久保田雄城)