また国民は「政治とカネ」問題を気に掛けなければならないのだろうか。日本経済団体連合会(経団連)が政治献金への関与を5年ぶりに再開することに決めた。9月11日、経団連は「政治との連携強化に関する見解」と題した文書を公開した。
また国民は「政治とカネ」問題を気に掛けなければならないのだろうか。日本経済団体連合会(経団連)が政治献金への関与を5年ぶりに再開することに決めた。
9月11日、経団連は「政治との連携強化に関する見解」と題した文書を公開した。この中では安倍政権の政策を賞賛したうえで今が「日本復活に向けた最大かつ最後のチャンス」、「国際社会から信頼される国づくりを力強く進めていく必要がある」として、企業の政治寄付を「社会貢献の一環」とし、「会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき」「日本再考に向けた政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかける」としている。経団連は民主党政権発足を機に取りやめていた政治献金を再開することを宣言したこの文書を、約1300社の会員企業と約160の団体に送るという。
この経団連の方針転換の影響は非常に大きい。会長が「財界総理」とも呼ばれていることからもわかるとおり大企業が名を連ねる経団連が5年前に政治献金を取りやめた後、政党への企業献金は激減し、現在では政党の収入のほとんどが政党交付金となっている。今回の献金再開で、自民党は大きな「財布」を手に入れることになった。
この文書の公開に先立ち9日に経団連の榊原定征会長と会談した谷垣自民党幹事長は、「自発的な寄付の呼び掛けは大変ありがたい」と榊原氏に謝意を表明した。谷垣氏は民主党政権発足後、経団連が献金をストップした時期の自民党総裁経験者であり、この発言はその苦労から出たものだろう。しかし、この谷垣氏の発言には野党転落時の反省が全く活かされていないと言わざるをえない。民主党が政権を獲得した際の大きな原動力となったのは国民の自民党に対する不信感だった。既に多額の献金を自民党にした企業が安倍首相の海外へのトップセールスに同行していたとの報道もある。国民が改めて自民党が「クリーンでない」と感じれば、高い支持率が露と消えることも十分にありうることだ。
政治献金が完全に悪だとも完全に廃止すべきだとも思わない。しかし、癒着につながらないよう制度を検討する余地はあるはずだ。今の段階での再開は時期尚早だと言わざるを得ない。献金再開に簡単に謝意を述べてしまう政治家に違和感を持つ国民の気持ちを、谷垣氏は理解していないのだろう。(編集担当:久保田雄城)