東急東横線の代官山駅と渋谷駅が地下化されたのは、もうすでに1年6カ月も前のことだ。渋谷ヒカリエ地下6階横の新しい東急渋谷駅は、「JRを含む他社線への乗り換えが不便」との声が利用者からあがっている。「以前の方が良かった」と思っている人が多く、渋谷駅の乗降客は確実に減っている。かつて電車で代官山から渋谷への移動で眺めていた車窓の街並みが懐かしいと思っている東横線利用者も多いのでは……。
ところが、かつて東横線電車の窓から眺めていた風景を歩きながら愉しめるようになるようだ。東急電鉄が旧東横線渋谷駅から代官山駅間の線路があったスペースに遊歩道を設置する計画を発表したのだ。
東急電鉄は2018年度をめどに東横線の渋谷駅と代官山駅近くを結ぶ1km強の遊歩道を整備する。昨年3月の東京メトロ副都心線との直通運転に伴い、線路の地下化で生まれたスペースを活用する。裏渋谷と呼ばれる渋谷駅南側から代官山駅までを一体で再開発する。2020年の東京オリンピックを控え、国内外から来街者が訪れる新名所に育てるというのだ。遊歩道の整備や南街区再開発を含めて総投資額は数100億円規模になる見通し。
起点となる渋谷駅南街区では高さ約180m、34階建ての高層ビルを建設が計画されている。ここにはオフィスやホテル、商業施設を誘致する。遊歩道は2018年の渋谷駅南街区の再開発と同時に完了する。線路跡地のそばを流れる渋谷川に清流を復活させて周辺を緑化し、散策のスペースを設ける計画も進めている。周辺施設の全体計画は今後検討し、渋谷区や地権者との調整も進める。
また、来春には代官山駅前の約3200㎡の敷地に商業施設5棟を開業する計画も進んでいる。線路跡地220メートルを活用、延べ床面積は計約1900㎡。キリンが出店を進める「クラフトビール」の新業態店など日本初出店となる衣料品店、雑貨店、ベーカリーカフェを誘致するという。ここでも線路跡地を活用した遊歩道で代官山と渋谷を直結させる。
東京五輪を睨んで都内各地で商業施設の建設や街区再開発が活発になっており、今後は各地で来街者の争奪戦が激化しそうだ。40年前に西武流通グループが渋谷でパルコ・パートⅠ・Ⅱを建設して公園通りへと人の流れを変えた。新しい遊歩道で、東急電鉄の狙いどおりの効果が現れるか?(編集担当:吉田恒)