農林中央金庫がみずほ銀行と中東6カ国の共同会社と組み、中東向けの農産物輸出拡大に乗り出すため基金を設立した。資金の大半は輸出先でのインフラ整備に利用され、農産物の鮮度を保つための冷蔵・冷凍庫設備などに投資される。
中東向けの農林水産品輸出の増大を目指し、農林中央金庫などJAグループとみずほ銀行<8411>がサウジアラビアを含む中東6カ国と協力して、総額500億円の基金を今年中に設立することを検討していることが10月6日、明らかとなった。集めた資金は輸出した農産物などの鮮度を保つための冷蔵・冷凍倉庫設備に投じられ、中東各国での日本からの輸入品を受け入れる体制づくりに充てられる。
世界的にブームとなっている和食人気を追い風に、政府も農産物の海外輸出に力を入れている。安倍政権は「農林水産業・地域の活力創造プラン」を掲げ、農産物や食品の輸出を2020年までに現在の約5,000億円規模から倍増させ、30年には5兆円まで拡大させることを目標としている。見本となるのはオランダだ。国土面積が狭く資源が少ないオランダは日本と条件が似ているが、農産品の輸出大国として成長を遂げた。08年では米国に次いで世界2位の輸出額となった。一方の日本は21位。圧倒的な開きが生じている。
日本の農産品は「安心・安全」を売りに海外で人気のはずだが、輸出は思うように伸びていない。日本産は高級品として高い値段でも売れるとよく耳にするが、しかし事実は「高すぎて売れない」のが現実のようだ。政府は輸出促進事業として海外でアンテナショップを設置したが、アラブ首長国連邦で展示販売された商品の値段は梨が1個3,800円、柿が1,900円など、桁違いに高い。それでもジャパニーズブランドとして現地で需要があるのかというと、そうではないらしい。実際にドバイに赴き現地の状況を目にした農業ビジネス誌『農業経営者』編集長の昆吉則氏は「高級ブランドとして日本産品を海外で販売するというのは、日本国内向けのパフォーマンスでしかない」と述べている。
13年のサウジアラビアなど中東6カ国への輸出額は72億円にとどまる。輸出拡大計画に伴う基金設立に参加するのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートの6カ国が共同で設立した投資会社ガルフ・インベストメント・コーポレーション(GIC)だ。JAは中東6カ国への輸出額を2,000億円まで伸ばしたい考えだが、本気で海外市場を狙うのなら、マーケットの変化に合わせて柔軟に対応していく力が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)