苦境の塾業界 赤字企業が年々増加

2014年10月25日 15:13

画・苦境の塾業界 赤字企業が年々増加

東京商工リサーチの調べによると、予備校や学習塾経営企業321社のうち赤字企業は年々増えており、2014年5月期には全体の18%に相当する58社が赤字に陥った。少子化による影響で塾業界は苦戦を強いられている。

 東京商工リサーチは2014年5月期までの3月期連続決算データを基に、全国の予備校・学習塾経営企業321社の経営状況を分析し、うち58社が赤字に陥っていることが分かった。

 全体での総売上高は前々期が5,317億2,200万円、前期が5,507億7,500万円、最新期では前期比2.0%増の5,618億6,100万円にものぼり、一見すると好調のようだ。しかし売上高が伸びているものの、利益にはつながっていないというのが実態であり、苦戦を強いられている塾は少なくない。

 最新期決算で見てみると、「増収増益」だったのが81社を占めているが、前期の87社から6.8%減となっている。反対に、増収したにも関わらず減益だった企業は、前期から11社も増加して57社だった。少子化の加速により市場縮小が避けられない中、生徒数を確保するためは競合他社と差別化を図る必要がある。充実したサービスや講師陣の質、集客のための広告など、かさむ一方の経費を回収できていないケースが多い。

 さらに赤字企業は前々期46社、前期49社、最新期で58社となり、年々増加している。赤字に苦しんでいる塾は全321社の18%に相当することなり、少子化が解消されない限り、この先も増え続けることが予測される。

 今年8月には大手予備校の代々木ゼミナールが全国27校のうち20校を閉鎖することを決定した。大教室・大人数での授業形態や浪人生をターゲットとする経営方法は、現役志向の現代の受験生のニーズにマッチしておらず、方針転換を図り損ねたことが背景にある。
 
 また、9月には静岡県を中心に全国展開していた秀英予備校<4678>が、15年3月末に全体の約1割に相当する17校を閉鎖または統合すると発表した。対象となるのは主に小中学生のクラスとなる。少人数・個別指導が支持される傾向にある今、集団授業を中心としていたことが敗因となったようだ。同校は1977年の創業時から11道県に257校まで校舎を広げ、生徒数は2014年3月期平均で約3万5,000人となっていた。しかし14年3月期までの2期で最終赤字を計上しており、役員報酬を減額するなど厳しい経営状況にある。少子化の波を乗り越えるには、市場のニーズを的確に読み取りながら、常に新しい戦略を携えておく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)