2015年末にフランスで開催される国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議いわゆる「COP21」での採択に向け、世界規模で取り組む2020年以降の温室効果ガス排出削減の新たな枠組みについて国際交渉が進められている。
COP21に先立ち、2014年9月にはニューヨークの国連本部で国連気候サミットが開催され、オバマ米大統領をはじめ各国の首脳が、京都議定書に続く国際的な枠組みや、温室効果ガスの削減対策などについてスピーチを行っている。日本からも安倍首相が参加し、「美しい地球」(クール・アース)や途上国の人材育成支援や適応対策支援などに言及した。
国家レベルでの取り組みも重要だが、地球環境の改善のためには、民間レベル、個人レベルの地道な活動が必要だ。とくに大企業が行う社会貢献活動は大きな影響力が期待される。しかし、CSR活動といっても様々で、企業によってその特色や得意分野は異なる。
例えば、自動車大手のトヨタは、持続可能な次世代モビリティの開発を目的に、豊田市と岡崎市にまたがる地域に研究開発施設の建設を進めているが、なんと事業予定地の約6割もの面積を保全エリアとして残し地域住民らとともに森林と谷津田の再生やその管理を行っている。アサヒビール株式会社では、次代を担う高校生を対象に、森や川での体験学習や企業訪問を通じて環境問題を肌で感じ、その問題解決法を自ら考え、実践していく「若武者育成塾」という取り組みを行っている。
また、住宅メーカー大手のパナホーム<1924>では、創業50周年記念プロジェクトとして、2013年10月に『パナホームファミリーの森』を開設している。開設にあたっては、緑のネットワーク形成の観点を重視し、魚付き林育成と震災被災地復興の観点から岩手県宮古市に、森林再生啓発と水源涵養林育成の観点から岐阜県高山市が選ばれている。
また、同プロジェクトでは、2013年10月1日からの1年間をキャンペーン期間として、期間内に契約した施主につき1本の苗木の植樹を実施した。また、今年10月にも施主とパナホーム社員による植林イベントを開催し、来春には全8000本の植樹を完了する。
現実的な数字ももちろん重要だが、名だたる企業が積極的且つ地道な活動を継続して行うことで、環境問題への認知と関心が高まることが最も大切なことではないだろうか。人間が長い年月をかけて壊してきた自然環境を取り戻すのは、一朝一夕でできることではない。失うのに要した何倍もの時間と労力が必要なのは当然だ。
先の国連気候サミットでは、安倍首相が温室効果ガスの排出量をどれくらい削減するか、について具体的な策を語っていないことを批判する声も一部で挙がっているが、政府や企業がいくら環境改善の機会を用意しても、それに誰も参加しなければ何も始まらない。まずは個人個人が積極的に参加していきたいものだ。(編集担当:石井絢子)