企業が積極的に取り組む「生物多様性」とは

2014年02月15日 18:33

 「地球温暖化」や「再生可能エネルギー」など、環境問題に関するキーワードは多々あるが、ここ数年で急速にクローズアップされている言葉がある。それが「生物多様性」だ。

 生物多様性とは「人間も地球に生息する生態系の一員であり、その生活は多様な生物が関わりあう生態系の上に成り立っている」という考え方のことで、生物多様性を維持し、持続的に利用していくことは、現在だけでなく未来の世代のためにも必要なことだ。

 日本で「生物多様性国家戦略」が最初に策定されたのは1995年。今から約20年ほども昔のことである。それ以来、これまでに4度の見直しが行われているものの、一般的に認知されていたとは言い難い。生物多様性に対する認知が広まったのは2012年以降だ。きっかけとなったのは、やはり2011年に発生した東日本大震災だろう。被災の教訓と反省から環境や自然共生社会のあり方に対する国民の関心や意識が高まったことと、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された愛知目標の達成に向けたロードマップを示すため、日本政府は12年9月、「生物多様性国家戦略2012-2020」を閣議決定したことで、民間企業も生物多様性に対するCSRの取り組みをそれまでよりも、より積極的に行うようになった。

 たとえば、タイヤ製品で世界シェアトップを誇るブリジストングループ<5108>は、愛知目標に沿った活動にグループ全体で取り組んでおり、タイヤ生産時のCO2削減、低燃費タイヤの普及による使用時に排出されるCO2の削減だけでなく、世界各地で、自然に触れ合いながら生態系保全の重要性を学ぶ環境教育を実施したり、小規模農園に対する栽培指導など、天然ゴムの生産性を上げるための支援を実施したりしている。また、凸版印刷株式会社<7911>では、間伐材の積極的利用や、土地利用評価手法に基づく生物多様性貢献度評価および生物モニタリングを各事業所で実施している。

 さらに企業単体ではなく、産官学連携での生物多様性の保全に対する活動も多く見られるようになってきた。今月12日には、大阪府、豊中市、公立大学法人大阪府立大学、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所、そしてパナホーム<1924>ら5者が「おおさか生物多様性パートナー協定」を締結している。

 パナホームでは、以前から本社敷地内の緑化ゾーン「つながりのひろば」に整備したビオトープを中心に、希少種等の保護管理活動や地域貢献活動を進めていたが、今回のパートナー協定を結ぶことによって、活動をさらに強化するとともに、大阪府民・市民に対しても普及啓発を積極的に行っていく。ちなみにパナソニックグループでは13年11月にエコソリューションズ社が同協定を締結しており、今回は同グループとしては2例目となる。

 生物多様性は日本国内だけのものではなく、世界的な関心事だ。環境や生態系を維持することは、決してボランティアや慈善活動ではなく、我々人間が生きて行くために必要なことであり、企業にとっても事業を持続させていく為に必要不可欠なことだ。とくに2020年には東京オリンピックの開催も控えており、今後世界から日本への関心も高まることが予想される中、日本社会や日本企業の信頼性を高める意味でも、こういった活動はもっと積極的に行われていくべきではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)