「和紙」が無形文化遺産登録へ 海外へのアピール・後継者育成の弾みとなるか

2014年11月03日 10:46

画・「和紙」が無形文化遺産登録へ 海外へのアピール・後継者育成の弾みとなるか

日本が誇る伝統技術「和紙」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなった。登録対象となっているのは、島根県の「石州半紙」、埼玉県の「細川紙」、岐阜県の「本美濃紙」の3つで、いずれも手漉きによる伝統的な製法で作られている。

 昨年の「和食」に続いて、日本が誇る伝統技術「和紙」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなった。登録対象となっているのは、島根県の「石州半紙(せきしゅうばんし)」、埼玉県の「細川紙(ほそかわし)」、岐阜県の「本美濃紙(ほんみのし)」の3つで、いずれも手漉き(てすき)による伝統的な製法で作られている。この内「石州半紙」はすでに無形文化遺産として登録されていたが、これに残り2つを加え、総合して「和紙」として登録し直される予定だ。そのため、日本の無形文化遺産登録数自体は変わらない形となる。

 これらの手漉き和紙は、クワ科植物であるコウゾの繊維のみを原料にして作られている。手順を簡潔に紹介すると、コウゾの白皮を浸して自然漂白し、柔らかくしてから煮てアクを抜き、そこからコウゾを水や植物の粘液と合わせ、漉いて作る。もちろん、さらに細かな工程も含まれている。こうした作業のほとんどすべてが手作業だ。非常に手間と労力がかかる上、使われる材料や道具も古くからのもので、新しい機械などは使われていない。和紙そのものの美しさだけでなく、こうした技術様式全体が無形文化遺産として認められた。

 和紙の需要は現在、障子や版画用紙、切り絵、和本などの商品はあるものの、国内での市場は頭打ちとなってしまっている。特に手漉きの和紙は生産量も少なくなっている。最近では和紙を使用したインテリアなどもデザインされているが、大きく普及しているとは言い難い。また、技術を持つ方々が高齢化し、後継者不足も心配されている。今回のユネスコ無形文化遺産登録を機に、国内外から注目が集まればそうした問題解決への第一歩となる可能性もある。

 特に和紙を使った照明やインテリアの海外へのアピールには絶好の機会だろう。和紙の照明と言えば、古くは行燈や提灯が思い浮かぶが、最近では和紙を使ったシャンデリアやフロアスタンドライトなども開発されている。技術面だけでのアピールではなく、そうした商品も同時に発信することで、海外からの注目が集まる可能性は高い。この登録を機に、伝統の和紙文化技術を数十年後も「生きた文化」として守っていってほしい。(編集担当:久保田雄城)