政府は今年6月、「労働安全衛生法」を改正した。遅くとも2015年末までに、従業員50名以上の企業に対し、社員の定期的な「ストレスチェック」を義務付ける内容だ。背景には、職場のメンタルヘルスが増え続けている現状がある。厚生労働省によると昨年度、仕事上の強いストレスによる精神障害の労災請求は1409件に上り、過去最高を記録した。
日本生産性本部の調査によると、上場企業で、最近3年間における「心の病」が「増加傾向」と回答した企業は29.2%と、12年の前回調査(37.6%)から減少し、3割を下回った。最も多かったのは「横ばい」の58%で、前回調査の51.4%、前々回の45.4%から増加傾向が続いている。過去8年間の推移をみると、心の病が「増加傾向」の割合は減少しているものの、「減少傾向」にまで至っている企業は10%に満たない。
調査は今年6月~8月にかけ、全国の上場企業 2424社を対象に実施。250社から回答があった。メンタルヘルスに関する調査は、2002年から隔年で実施しており、今回は2012年に続く7回目となる。
「心の病」が最も多い年齢層を尋ねたところ、ここ10年で大きな変化がみられた。2010年までの調査では「30代」が約6割と突出して多く、次いで40代が2割前後、10~20代、50代の順となっていたが、2012年の調査からは「40代」と「30代」がそれぞれ3割強を占めるようになった。今回の調査でも、「心の病」は30代(38.8%)と40代(32.4%)で最も多くなっている。さらに「10~20代」も18.4%と2割弱おり、若手を中心に心の病を発症する割合が高まっている。
「心の病」が増加傾向にある組織では、“従業員の孤立”が進んでいることも明らかになった。調査では、「個人で仕事をする機会が増えた」「職場での助け合いが少なくなった」「職場でのコミュニケーションの機会が減った」と回答した企業ほど、心の病が「増加傾向」とする割合も高かった。一方、「従業員の声が事業開発や業務運営に反映されている」「異なる雇用形態の人とのコミュニケーションはスムーズである」と答えた企業ほど、心の病は減少傾向との結果になっている。日本生産性本部では、「組織内の垣根を越えたコミュニケーション」や、「メンバーシップの確保と拡大」が重要だとコメントしている。(編集担当:北条かや)