観光は日本経済復興のカギを握る極めて重要な成長分野だ。超高齢社会に突入し、人口減少や少子化が社会問題となっている今、国内の観光需要のみならず、めまぐるしい成長を見せるアジア諸国をはじめとする海外からの観光需要を取り込むことは、地域経済の活性化、雇用機会の増大などに繫がるものとして、注目が高まっている。とくに今年は、国土交通省が中心となって推進している訪日プロモーション事業「ビジット・ジャパン事業」が開始されて10周年。3月には政府も内閣総理大臣主宰のもと、観光立国推進閣僚会議を立ち上げて本腰を入れ始めた。6月に行われた第2回会合では「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」をとりまとめるなど、訪日外国人旅行者数2000万人を目指して積極的な動きをみせている。
そんな中、10月17日に香港で開催された、「アジア・パシフィック・ホテル投資会議」(以下HICAP)において、「ザ・リッツ・カールトン京都」が、この1年間に開業した最優秀のホテルに贈られる「Reggie Shiu Development of the Year」を受賞した。
今年で25周年を迎えるHICAPは、世界のホテル投資家や開発事業者、設計事務所、ホテル事業者、コンサルタント等を対象としたホテル投資会議だ。また、同賞はアジア・パシフィックのホテルのパイオニアの一人であり、スマトラ沖地震で犠牲となったReggie Shiu氏にちなんだ賞で、これまで過去4年では、シンガポールの「マリーナベイサンズ」(2010年)、「ザ・リッツ・カールトン香港」(2011年)、「パレスホテル東京」(2012年)、などが選ばれている。
完成までの課題克服、開発規模、イノベーション、パフォーマンス、ROIなど様々な評価項目から選定される名誉ある賞だ。
「ザ・リッツ・カールトン京都」は、世界有数のホテルチェーン、マリオットホテルグループの最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン」の日本国内4店舗目として、積水ハウスが事業資金を投じ2014年2月7日に開業した。言うまでもなく、京都は17の世界文化遺産を有する日本屈指の観光都市。国内外を合わせて年間約1200万人が宿泊客として訪れ、海外からの観光客にも絶大な人気を誇る。もちろん、宿泊施設は大小合わせて多数あるが、同ホテルは京都で宿泊する際の新たな選択肢となるべく、富裕層にターゲットを絞った質の高いサービスを展開して好評を得ている。地下2階、地上5階建て。客室数は134室と、隣県である大阪のラグジュアリーホテルなどと比べるとやや小ぶりではあるものの、客室平均面積は50平方メートルと、京都市内最高水準の広さを誇る。また、四季折々に移り変わる東山三十六峰や鴨川の景観を存分に楽しめる月見台を持つスイートなども面白い。さらに、「ザ・リッツ・カールトン京都」も同様は、事業者である積水ハウスの意向もあり、元々この地に明治40年に建造された藤田財閥の創始者、藤田伝三郎氏の別邸「夷川邸」をレストランに移築したり、元あったホテルフジタの一部であった滝を保存して利用するなど、新しさと古さを融合した極上のラグジュアリーを演出している。
開業時には、山田啓二京都府知事も「このホテルは国際観光都市・京都全体の魅力向上の大きな力となるだろう」と述べて大きな期待を寄せていたが、今回の受賞のように、今後もさらに注目されることになるだろう。(編集担当:石井絢子)