東京五輪・パラリンピック開催が決定して1年が過ぎた。11月5日、メイン会場となる新国立競技場の建て替えに関して日本を代表する国際建築家の磯崎新氏が「このままでは巨大な『粗大ごみ』を生み落すことになりかねない」と苦言を呈した。
2020年に東京五輪・パラリンピック開催が決定して1年が過ぎた。しかし準備は着々と進んでいるとは言い難いようだ。11月5日、メイン会場となる新国立競技場の建て替えに関して日本を代表する国際建築家の磯崎新氏が「このままでは巨大な『粗大ごみ』を生み落すことになりかねない」と苦言を呈した。
国立競技場は、五輪誘致活動に際して建物の老朽化解消や規模拡大の必要性から、建て替え案を国際コンペで募集。12年11月にイギリス人建築家のザハ・ハディド氏のデザインが選出された。
しかし当初1,300億円という見込み額だったのに対し、総工事費が3,000億円にまで膨らむことが明らかとなった。曲線を多用したデザインは「ヘルメット」や「亀」のようだとの批判も浴びているが、斬新すぎるそのデザインが災いして建築費を押し上げているのは間違いないようだ。収容人数8万人で、緊急時には広域避難所としても機能させるため、安全面のためも曲線の不安定な形状を支えられるだけの補強が必要となる。また特殊な構造と開閉式屋根、可動式のスタンドなど、工事の難易度の高さや、延べ床面積が12年度の五輪開催地だったロンドンのメイン会場と比較しておよそ3倍の広さとなっていることも問題に挙げられていた。
結局、日本スポーツ振興センター(JSC)が修正案を出し、床面積を25%削減することで総工費を1,625億円まで抑えた。業者を選定する入札にも手間取ったが、今年10月31日には大成建設<1801>がスタンド、竹中工務店東京本店が屋根を担当することで落ち着いた。
だが、ここにきて磯崎氏から痛烈な批判が発せられた。その理由は修正案にある。磯崎氏はハディド氏の原案デザインを高く評価しているが、幾度もの計画変更を経たせいで現在の修正案は「ダイナミズムが失せ」、「鈍重な亀」のようになったと主張。磯崎氏はコンペの結果を尊重してハディド氏に今一度再設計させるべきだと意見を述べた。また「巨大な粗大ゴミ」発言の真意は、オリンピック後の使途を指している。膨大な建築費をかけた巨大施設が、人口減を迎えている日本で今後どのような役割を果たすのか。維持や管理の費用も必要となる。祭りの後についても慎重な議論が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)