進む無電中化 景観向上や防災にもメリット

2014年10月22日 09:33

画・進む無電中化 景観向上や防災にもメリット

日本では電力や通信データを各家やビルにきちんと送り届けるため、電柱はなくてはならない存在だ。だが実は現在上述した都市のように、少しずつこの電柱を無くしてしまおうという動きが加速している。無電柱化のメリットとしてまず挙げられるのは景観の向上だ。

 エッフェル塔の展望台からパリの街並みを見下ろしたことのある人はもしかすると気付いたかもしれない。或いはロンドンのトラファルガー広場を闊歩したことのある人も同様だ。パリもロンドンも世界有数の都市だが、同じく巨大都市である東京とは大きな違いがある。それは電柱の有無だ。
 
 日本と違いパリやロンドンでは歴史的に電線は地中に通すやり方であった。またニューヨークも過去に電線に触れて感電死する人が多かったという理由で既に8割以上が地中に埋められている。
 
 日本では電力や通信データを各家やビルにきちんと送り届けるため、電柱はなくてはならない存在だ。だが実は現在上述した都市のように、少しずつこの電柱を無くしてしまおうという動きが加速している。一体何故なのだろうか。

 無電柱化のメリットとしてまず挙げられるのは景観の向上だ。人工的で無機質な電柱や電線が視界から消えることで、特に歴史的街並みを持つ地域にとっては観光地としての価値が大きく上昇する。
 
 また、防災の観点からも無電柱化には大きな意味がある。今年宮崎県に大きな被害をもたらした台風8号だが、ある民家の屋根を直接押し潰したのは倒れた電柱であった。電柱が倒れれば当然大規模な停電も発生する。ライフラインを守るためにも無電柱化を推進する意味は大きい。
 
 その他、道幅が広くなるため救急車や消防車が緊急時に走行しやすくなったり、車イスやベビーカーを利用する人のためのバリアフリー化も進むことになる。

 このようにメリットの多い無電柱化だが、実は大きな問題も存在する。それはなんといっても高コストであることだ。
 
 通常1kmの距離に電柱を設置する場合、その費用は約2,000万円必要となる。だが、これを地中に埋没させるとなると、なんとその18倍。約3億5,000万円も費用が掛かってしまうのだ。今後無電柱化を進めるにあたってはこのコストをいかに抑えるかが重要なポイントとなる。

 現在、専門家らによってコストを引き下げるための新たな工法の研究や提案が盛んに行われており、既に一部の民間企業では独自の工法を開発することによって無電柱化を積極的に実現させる動きが活発化している。

 日本に旅行に来た外国人からは、空に張り巡らされた電線の数に驚く声も多く聞こえる。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。日本政府も2,000万人の観光客を呼び込むことを大きな目標としている。残り6年という時間は決して十分とは言えないが、日本が世界中から注目されるその時までに、東京の空が今より少しでも広くなっていることを願いたい。(編集担当:久保田雄城)