画像は、民家の裏庭にあるトイレを消毒する「国境なき医師団(MSF)」のスタッフ。感染拡大を防ぐためには、医療機関の充実の他、現地の住宅環境や生活様式まで含め、改善や予防対策の徹底を行わなくてはならない。資材・人出ともに足りない状況が続いている。
衆院選関連のニュースが連日報じられ、現状が伝えられることが少なくなっているが、西アフリカを中心としたエボラ出血熱の猛威はまだまだ続いている。11月21日には、世界保健機関(WHO)による最新の現状報告が行われた。それによると、現在疑い例も含み、エボラ出血熱感染者数は15351人、死者数は5459人にのぼり、その内医療従事者の感染は588人、死者は337人になったという。
各国の感染状況だが、感染の中心となっている3ヶ国の内ギニア、リベリアでは徐々に感染が収まりつつあるが、シエラレオネでの感染はまだ拡大を続けている。また、近隣の国への感染も続き、新しくマリで6人の感染が確認され、全員が死亡している。
各国からの医療従事者への感染防止も、まだまだ対策が十分とは言えない。これまでにアメリカやスペインで、帰国した医療従事者のエボラ出血熱感染が確認されたことがあったが、11月24日にはイタリア人医師の感染が確認され、帰国後、ローマ市内の国立感染症研究所で治療を受けている。こうした現状からも分かるように、どの国もいつでも感染した患者を受け入れ可能な体制を作っておく必要がある。
日本もようやく自治体向けの対応指針をまとめた。その指針によると、国内で患者が確認された場合、患者の家族や診療に関わった医師、同じ飛行機で患者の1メートル以内に乗り合わせた乗客などに対し、最長3週間、保健所から1日2回発熱などがないかの確認を行うとしている。また、家族や医療従事者が患者の体液に触れた恐れがある場合は、最長3週間、外出の自粛を要請するようにも求めている。こうした自治体への対応指針は、自治体からさらに住民へとしっかり周知される必要がある。また、自治体への対応だけでなく、受け入れる医療機関への対応指針も明確にガイドラインを作らなければならない。
21日、WHOのマーガレット・チャン事務局長、国連のパン・ギムン事務総長、世界銀行のジム・オン・キム総裁らは今後のエボラ出血熱対策について会合を行った。「流行の終息はまだ遠い」としながらも、「現在の対応を加速し続けることができれば、来年の半ばまでに感染の拡大を封じ込めることも可能だ」と発表した。しかしこれは、少なくともあと半年以上は感染拡大を止めるのは難しい、という意味でもある。
各国でワクチンの開発・臨床試験も続いているが、どれも未承認で、状況を一変するのはまだ難しいだろう。医療設備・環境の改善、世界的な対策の共有などを進めながら、対症療法でじりじりと封じ込めていく一進一退の状況が続いている。国連・WHOの発表通り、まだ終息は遠く、予断を許さない。
師走に降ってわいた選挙戦に翻弄される日本だが、世界的な危機のことも忘れてはならない。(編集担当:久保田雄城)