各党党首が30日、NHK番組で討論した。アベノミクスについては与党の自公以外にも新党改革、次世代の党が第3の矢をより具体的にと後押し。維新は、アベノミクスは断行すべきとする一方で公共事業による税の配分には反対、生活者支援を提起した。民主、共産、社民、生活の党はGDPの6割を占める個人消費と生活者の懐を温めるための経済政策への切り替えを提起した。
討論で安倍総理は「アベノミクスは企業競争力を強化し収益力を上げ、雇用を拡大し、賃金を上げ、消費を拡大し、景気を良くしてデフレから脱却して成長をし、国民を豊かにするもの。今、企業は最高の収益をあげ、雇用は拡大し、消費が拡大していく。これをしっかり進めていくことで、全国津々浦々に景気回復の実感を届けたい」とした。
民主党の海江田万里代表は「アベノミクスに対する期待は大きかったが、2年経って、景気回復の実感はないという方が8割。雇用が増えたというが、ほとんどが非正規労働で、正規労働者は減っている。正規労働者が増えなければ賃金も上がらない。2四半期続けてGDPがマイナスなので非正規の方たちがこれからも続けて就労していけるのかは非常にクエッション」と就労者は増えたが不安定な非正規労働が増えただけと指摘した。
維新の党の橋下徹共同代表は「日本が稼げる国になるためにはアベノミクス改革を断行しなければいけない」としたうえで「自公が改革にブレーキをかけている。民主も共産も改革ができない。大阪での地下鉄、バス、上下水道の民営化に全部反対しているのは自民、民主、公明、共産だ。改革断行には維新の党が絶対必要」と訴えた。
また「公共工事は間違っている」とし「公共工事で税の再配分をするのではなく、生活支援に切り替えるべき」と主張。「5兆円も公共工事を増やすのなら5000万人にクーポンとして配れば1人10万円のクーポンになる」とし、「分厚い中間層をしっかりサポートすべき」とした。
公明党の山口那津男代表は「アベノミクスで賃金が上昇し、雇用が改善、失業率も下がってきた。大学生、高校生の就職内定率も上がってきた。景気の好循環を生み出しつつある」と主張。「名目賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないが、消費税増税を延期して、賃金上昇をさらに続け、物価上昇を追い越す。これがこれからのやり方」と説明した。
次世代の党の平沼赳夫党首は「アベノミクス前半は成功したと思う。賃金があがり、株価があがり、評価されるべきことだ。ただ第3の矢は具体性に乏しい。100兆円を超えるような基金を別途設け、経済活性化の財源にあてるべき」とした。
日本共産党の志位和夫委員長は「アベノミクスは暮らしに2つの罪悪をもたらした」と指摘。「国民の反対を押し切り消費税を8%にした。増税不況。第2は格差拡大をもたらした」。「一部の大資産家、大企業には巨額の儲けが(大幅な株価上昇で)転がり込んだが、庶民には円安による物価高で生活苦が襲っている。雇用も増えたのは非正規で、正社員は2年で22万人減っている。賃金も実質賃金が15か月連続してマイナスだ。この道しかないというが道に先はない。大企業応援から暮らし第一に経済政策を転換することが必要」とした。
安倍総理は格差拡大での批判に「大切な問題と考えている。資本主義、市場主義では格差問題に注意深く目を向けていく必要がある。セフティネットを拡充していく。そのため消費税増税もする。経済も発展させなければいけない。みんなの収入が増えていくようにする」と強調した。
生活の党の小沢一郎代表は「アベノミクスで株は上がり、円安になった。その結果、物価は上がったが実質収入は下がった。GDPを支えているのは6割を占める個人消費であり、景気を良くするには個人消費を拡大する以外にない。そのためには個人の生活の安定と収入増が必要。生活を安定させ、庶民の収入を増やす施策こそ必要」とした。
社会民主党の吉田忠智党首は「急激な円安での物価高、4月からの消費増税、この間の規制緩和など、年金・医療・介護給付削減、そうしたことが重なり、GDPの6割を占める個人消費が振るわない、設備投資も振るわない、7-9月のGDPマイナス1.6%になった」と指摘。
吉田党首は「民主党政権下での実質経済成長率は1.52%だった。安倍第2次政権では0.96%だ。民主の時より下回っている」と指摘。「高所得者と低所得者、大企業と中小企業、製造業と非製造業、輸出型企業と内需型企業の格差を生んだ、安倍総理には違う道もあることを考えてもらいたい」とした。
新党改革の荒井広幸代表は「脱原発を目指す保守党として、是々非々の立場ですが、民主党のあの沈滞の時に戻していいのかと。是非、アベノミクスを成功させなければならない」とした。
安倍総理は「アベノミクスは途半ばで、中小企業の4割は賃上げを行っていない。経済対策で消費を押し上げていきたい」などと語った。(編集担当:森高龍二)