「価格転嫁できない」が8割 円安によるマイナス影響に苦しむ中小企業

2014年11月29日 17:52

 次期総選挙の争点となっているアベノミクスだが、その恩恵は一部の大企業のみに留まり、中小企業の経営は依然として厳しい実態が浮き彫りになった。東京商工リサーチの調査によれば、円安によって仕入れ価格の上昇などのマイナス影響を受ける企業が半数を占めており、価格転嫁できていない企業が多かった。また円安に対する対策では、「特に対策を講じていない」との回答が多く、危機感を募らせながらも、急激な円安の進行に対して為す術がない、厳しい実態が浮き彫りになった

 円安による影響が「ある」と回答したのは、3,721社(構成比76.0%)と約8割にのぼった。このうち、「マイナスの影響」との回答が2.372社(同48.4%)と全体の約半数を占めた。これに対し、「プラスの影響」との回答は239社(同4.9%)にとどまり、円安の進行が、企業経営にとって悪影響を及ぼしていることがわかった。

 円安によって受けた影響のうち、主なものは「仕入価格の上昇」で2,483社(構成比66.7%)と最多。次いで、燃料価格の上昇の710社(同19.1%)。また、「受注減少」が139社(同3.7%)だった一方で、「受注増加」の回答も260社(同7.0%)あり、円安が大手輸出企業を中心に収益を押し上げ、少数の企業は恩恵を受けていることがわかった。

 「円安による影響が『ある』と回答」した企業のうち、価格転嫁が「できていない」との回答が3,007社(構成比80.8%)と8割を占めた。円安の影響分を価格転嫁できず、自社で負担する企業が圧倒的に多い。

 円安に対して期待する政策では、「特になし」や「期待しない・出来ない」などの回答が593社と最も多かった。「中小企業対策」を期待する回答の中では、「大企業ばかりが潤っている」「大手優先の政策を改めてほしい」との回答が目立っている。

 政府は10月に経済関連団体に対し、原材料など仕入れ価格が上がったコスト増加分の適正な価格転嫁を受け入れるよう要請している。一方で、アンケートからは、中小企業中心に価格転嫁が進まず、急激な円安の進行に苦慮する実態が明らかになっている。(編集担当:横井楓)