「私のしごと館」壮大な無駄遣いに終止符?

2014年12月03日 12:23

 京都府の南部、精華町と木津川市にまたがる土地に「私の仕事館」という施設がある。テレビなどで見たことがある人も多いだろう。そう、「無駄使い」の典型的な事例としてこの館は悪い意味で知られていた。もともと厚生労働省所管の雇用・能力開発機構が2003年10月に開館した施設であり、建設に総額581億円もかかった。

 これは、子供・若者が職業体験することを目的として、職業や仕事というものを身近に感じられ、知り、学べる体験型の施設だ。学習を通じてキャリアや職業意識を形成することにもつながることが期待された。8.3万平方メートルの敷地に、延べ床面積3.5万平方メートルの建物で、3階建てである。施設内には、宇宙ステーション、ちょんまげ人形、燻蒸(くんじょう)庫など、そのユニークな設備・モニュメントが展示されている。

 開館してからは予想外の出来事が続いた。毎年の入居者数が30万人前後と目標の3分の1に達せず、さらに年間10億円を超える赤字を出していた。そのため10年に閉館。その後、京都府が国に対して無償譲渡を求め、それが認められた結果、無償で京都府に譲渡された。

 その後、4年半も入居する企業・団体もないまま月日が過ぎていたが、ようやく9月に入居する企業が決まった。京都情報学園、日本テレネット(中京区)である。京都情報学園はインターネット上のドメインの管理などを行う。日本テレネットは太陽光発電などを行う。両企業とも入居は来年。

 入居が決まる前に、京都府は「私のしごと館」の名称を変更、「けいはんなオープンイノベーションセンター」として来年から新たに再スタートすると発表していた。医療、エネルギーや情報、文化・教育などの研究拠点とする方針を京都府は示し、企業の入居を募っていたことが実を結んだ形だ。

 私のしごと館が閉館後、国は入札をして購入先を見つけようとしたがうまくいかなかった。さらに、毎年約5000万円の維持管理費用がかかっていた。これでやっと一段落がついたといえる。しかし、まだこの施設建設にかかわった人の責任や失敗の原因は問われていない。(編集担当:久保田雄城)