世界初の完全養殖近大マグロ 豊田通商提携で増産開始

2014年12月10日 09:58

画・世界初の完全養殖近大マグロ 豊田通商提携で増産開始

近畿大学は11月26日、ブランド養殖魚「近大マグロ」を、豊田通商の養殖マグロにも認定すると発表した。近大マグロの市場供給量はこれまでの1.5倍になる予定で、2020年に3倍まで増やしていく計画だ。

 近畿大学は11月26日、独自に養殖方法を研究開発したブランドクロマグロ「近大マグロ」を、豊田通商<8015>の養殖マグロにも認定すると発表した。近畿大学は2010年から豊田通商と業務提携を行っており、今年7月に「水産養殖事業推進に関する覚書」を交わし、本格的な事業化に乗り出した。今回、豊田通商が生産するクロマグロが近大マグロの基準をクリアしたことで、近大マグロの市場供給量が一気に増加する見込みだ。これまでの約2,000尾から3,000尾の1.5倍になる予定で、20年に3倍まで増やしていく予定。

 折しも11月17日に国際自然保護連合(IUCN)が太平洋クロマグロを「レッドリスト」に載せ、絶滅危惧種に指定したばかりだった。IUCNの発表では太平洋クロマグロは、22年間の直近3世代で19~33%ほど減っている。アジアを中心に消費量が増加したことで、乱獲による影響から絶滅のおそれがあるとした。ただし、絶滅危惧種に指定されたのは太平洋クロマグロのみで、海域が異なる大西洋クロマグロは資源量の回復が確認されており、該当しない。

 しかしクロマグロは国際間で資源管理されている状態で、今後さらに個体数の減少が進めば流通が規制され、十分な供給量を確保できなくなる可能性がある。「マグロが食べられなくなる日がくるかもしれない」という懸念が広がっていたが、近大マグロの安定供給が実現すれば心配は杞憂に終わるだろう。

 これまでは稚魚を捕獲して養殖するというのが一般的だったが、近大マグロは世界で初めて卵の人工ふ化に成功。豊田通商は長崎県の五島列島にある子会社「ツナドリーム五島」に大規模な養殖場を設置し、そこで近畿大学でふ化させた稚魚を成魚まで養殖する計画だ。豊田通商の近大マグロはレストラン「近畿大学水産研究所」の銀座店とグランフロント大阪店にて、12月4日からランチで提供が開始される。

 豊田通商の三浦芳樹食料本部長は「マグロの食文化を守る」と意気込みを語っており、「養殖マグロの普及を目指していく」と抱負を述べた。将来的には輸出も視野に入れており、クロマグロの資源回復にも重要な役割を果たしそうだ。(編集担当:久保田雄城)