やっぱり無理があった2020年度食料自給率50% 国民負担年420億円以上も

2014年10月29日 12:18

画・やっぱり無理があった2020年度食料自給率50% 国民負担年420億円以上も

財務省は10月20日、財政制度等審議会の会合を開き、2020年度までにカロリーベースの食料自給率50%を目標とする計画の見直しを提案した。食料自給率を1%上げるには、国民に年420億円以上の負担をかけるという試算も出ている。

 10月20日に開かれた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の会合で、財務省は、カロリーベースの食料自給率引き下げについて言及した。「食料・農業・農村基本法」では、食料自給率の目標設定が必要とされているが、基本計画は5年毎に見直しが行われる。農林水産省では、来年3月に策定が予定されている次期計画に向けて、食料自給率目標の再検討を進めている最中だ。

 現在の目標では、2020年度までに50%まで上昇させるとしているが、現実的に考えると達成は難しい。農林水産省のデータによると、食料自給率は1985年に53%だったものの、90年48%、95年43%、2000年40%、05年40%と減少し続け、10年では39%まで落ち込んでおり回復の兆しは見えない。

 さらに財務省が出した試算では、食料自給率を1%上げるためには国産小麦を年間40万トン増産する必要があり、それに応じて国民が背負う負担は年420億~790億円にものぼる。国民生活を守るための計画が、逆に国民を圧迫しかねないとあっては本末転倒だ。

 財政審は、無理な目標を設定することは財政的な負担ともなり、国民にも影響を与えかねないとして、食料自給率を見直していくよう求めた。また、国内生産量を上げるために助成金制度ばかり増やすのではなく、農業全般の未来を見据えながら次世代の育成に力を注ぎ、農業産業の底上げによって自給力向上を目指すべきだとした。

 特に耕地面積が狭い日本では大規模農業ができず、生産量も限られている。その上、少子化の加速により、人材不足もますます懸念されるところだ。先細りする一方の農業を活性化させるには、若者の就農を支える対策に加え、生産効率を上げるための技術開発が欠かせない。

 21日には西川公也農林水産相も閣議後記者会見で、「20年に50%まで食料自給率を引き上げるというのはかなり困難」と見直しの必要性を認める発言を行った。農林水産省は来年3月までに議論を重ね、新たな目標を決める予定だ。先進国の中でも最低水準となっている日本の食料自給率だが、やみくもに数字ばかりを追うのではなく、国土条件と社会状況にマッチした着地点を探すことが重要だろう。(編集担当:久保田雄城)