「地方創生」を後押しする、地元密着型中小企業の活躍

2014年11月08日 20:12

 9月に発足した第二次安倍改造内閣において、安倍首相は「地方創生」をアベノミクス第2弾の大きな柱に位置づけている。地方からの信頼が厚い元幹事長・石破茂氏を新設した地方創生担当大臣に任命しただけでなく、安倍首相自らも「まち・ひと・しごと創生本部」の本部長に就任し、地方の人口減少に歯止めをかけ、地方を活性化させるための「地方創生」に積極的に臨んでいる。

 先般も、地方創生の実現に向けて政府が設けた有識者会議で、地方分権を巡って地方自治体から提案された935にも上る案件のうち、給水の対象が5万人を超える水道事業を許可したり指導監督したりする権限や、「医療用麻薬」を薬局間で譲渡する際の許可権限など、129件を地方自治体に移譲するよう求める中間報告を取りまとめている。

 こうした安倍内閣の地方の復興と活性化を目指す積極的な姿勢には経済界などからも大きな期待が寄せられる一方、前岩手県知事で元総務相経験者でもある増田寛也座長率いる「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会では、全国にある1800市区町村の内、半数が2040年には存続の危機に直面するという予測を発表している。

 いずれにせよ、政府がいくら頑張ってみたところで、それだけでどうにかなるような問題ではない。地方創生を成功させるためには、やはりその地域に住まう住民や企業の力が欠かせない。そこで注目されるのは、地方で頑張っている中小企業の存在だ。

 例えば、物流拠点都市として国際交流が活発化している青森県の八戸市では、商工会議所青年部が中心になって1994年に設立された地場密着型の貿易商社・株式会社ファーストインターナショナルが、経済産業省によって「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定されている。同社では、青森の代名詞でもあるりんごをはじめ、長芋や冷凍水産物など地元の産品をアメリカ、台湾、中国などに輸出する一方、オリーブオイルやワイン、建材等の輸入を行っている。

 また、中小企業といえばものづくりに携わる町工場のイメージが強いが、町工場は何も東大阪だけの特権ではない。山口県下関市の株式会社ひびき精機は社員の平均年齢が三十歳という若さにも関わらず、高い技術を要する複合精密切削加工で全国的に知られており、全国からの発注が後を絶たないという。技術者不足や後継者不足、高齢化などの問題が取り上げられる中、徹底した人材育成によってこの問題を打開していることは、驚きとともに人材不足に悩むあらゆる業界に一つの可能性を示してくれている。

 さらに東京大田区の工務店、株式会社桧山建工も面白い。同社は、元々大工だった社長が1966年に起こした会社で、当初は不動産会社などの下請け工務店として業務を行ってきたが、リーマンショックを機に下請けからの脱却を図って業態転換した。日本最大の工務店ネットワークジャーブネットに加入したり、設計事務所と連携して注文住宅の施行を自社の業務の中心へとシフトしたのだ。さらには商圏を大田区、目黒区、世田谷区に徹底的に絞り、地元の信用を勝ち取ることに成功した。今では、付近の町内会から会館の建て替えの依頼を受けるなど、激戦区である東京のど真ん中でもシェアを獲得している。

 安倍内閣の狙い通りに地方が活性化すれば、国内の景気が上向くのは間違いない。そしてそれを後押しするのが、これら地元密着型の中小企業の存在だ。中小企業にとっても、景気に左右されない強靭な経営の基礎となるのは、地元からの圧倒的な信頼だろう。インターネットの普及で世界の垣根が急速に狭まりつつある世の中だからこそ、人と人とのつながりやぬくもり、信頼といったものが、企業にとっても今まで以上に重要になってくるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)