ムーディーズは日本の政府債権をAa3からA1へとワンランク下の格付けにした。安倍首相の消費増税見送りなどの表明を受けて財源確保などの不透明性、財政赤字の削減目標を達成できるかどうかなどへの不確実性が増したことなどが理由に挙げられている。
ムーディーズ・インベスターズ・サービス<MCO>は日本の政府債権をAa3からA1へとワンランク下の格付けにした。これはG7の中でもイタリアに次いで二番目に低い格付けとなる。安倍首相の消費増税見送りなどの表明を受けて財源確保などの不透明性、財政赤字の削減目標を達成できるかどうかなどへの不確実性が増したことなどが理由に挙げられている。
A1の格付けは規模が大きく、国内制度の頑健性などをかんがみて非常に信用リスクが低い(信用度が高い)と判断された政府国債であることを示すランクであるが、その実チェコやその他新興国と同じランク付けであり、東南アジア諸国内では中国や韓国などの国よりもワンランク下の格付けである。同じくアメリカ合衆国に拠点を置く大手信用格付け会社のS&P<SPX>とフィッチ・レーティングスの日本国債の格付けも比較的高いランクではあるものの見通しとしてはネガティブという評価を付けている。
世間の声としては賛否両論であり、「(ランクを下げるのは)当然といえば当然である」とした声も少なくはない。しかし、はたしてこの評価がどの程度信用に値するのであろうか。ある国の格付け会社が付けた企業のランクと他国が付けた同じ企業のランクに大きな差が存在しているという例は多く存在し、直前まである程度高い位置に格付けされていても、破綻に陥る例もあったという。そのようなことを踏まえると完全に客観的な根拠に基づく格付けなのだろうかという疑問も当然湧いてくる。あまり重大に受け止めすぎると、かえって混乱を招く可能性があるので注意が必要だ。
現に日本の格付けがワンランク下がったというニュースが騒がれたが、市場はいたって冷静に動いていたのはあくまで、投資対象への指標の一つとする見方が多いからであろう。だがしかし、今回の件で国際的に見た増税延期の評価はあまり芳しくないということを真摯に受け止めるべきである。(編集担当:久保田 雄城)