スマートフォンやタブレットPCの爆発的な普及に伴って、それらに搭載されるセンサ技術の発展が目覚しい。言うまでもなく、スマートフォンの小さな筐体の中は、最新技術の宝庫だが、その最たるものがセンサである。通話品質や通信速度もさることながら、センサの優劣が機種の評判を左右するといっても過言ではないだろう。
ひとくちにセンサといっても、用途は様々だ。角加速度を感知するジャイロセンサをはじめ、照度、地磁気、加速度、気圧、温度、カラーなど、実に10種類以上ものセンサが小さな筐体に搭載され、それらが作用することによって、ナビゲーション機能やゲームなどのアプリケーションもストレスなく利用できるようになっている。
高機能・高性能のセンサを目指した研究は、日夜行われており、日本の半導体企業も大きな成果を挙げている。例えば、先日もローム株式会社が、周囲光のRGB 成分、色温度や照度を検知する最新のカラーセンサ「BH1745NUC」の開発を発表したが、これは業界最高の赤外線除去特性を実現した優れものだ。独自の赤外線除去技術と演算方式を駆使することで、赤外線の影響を従来品比1/10以下にまで低減することに成功している。
カラーセンサは、近年注目が高まっているセンサの一つで、周囲のRGB成分を分析して自動でディスプレイ画像を調整したり、照度に応じてディスプレイのバックライトを調光するために用いられるものだ。普段、我々がセンサの存在を気にすることはほとんどないが、いつでも、どんな場所でも最適な明るさで画面を見られるのは、照度センサとカラーセンサが働いているお陰だ。センサの能力が低いと状況によって画面が見えにくかったりするストレスが発生してしまう。
センサ技術の発展により、携帯時代よりも格段にディスプレイが見やすくはなったものの、カラーセンサにおいては、一つの課題があった。それは、光をセンサ素子に取り入れるための光学窓のデザインだ。従来の製品では、可視光をしっかりと検知するため、透明の光学窓が使用されていたが、デザイン性の高まりを受けて、筐体に合う暗い光学窓が求められる傾向が強くなっている。ところが、この暗い光学窓を使用した場合、可視光の情報が赤外線の影響を受けて正確な色味を検知できなくなるという課題があった。
今回、ロームが開発したカラーセンサ「BH1745NUC」の革新的ともいえる大きな特長は、独自の赤外線除去技術と演算方式など、同社の光センサ開発のノウハウを駆使してこの課題をクリアし、透過率の低い暗い光学窓にも適用可能な点にある。
日中の屋外などでスマートフォンを使おうとすると、画面が見えにくくて日陰を探しイライラするようなことがあるが、このセンサが普及すれば、もうそんなストレスを感じることもなくなるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)