景気の急速な悪化をバックボーンに、消費マインドの冷え込みは継続している。そのような中、2012年のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)は約5万店舗と店舗数が増加。百貨店やスーパーの売り上げの減少に歯止めがとまらない今、タスポ効果が一巡し、また、復興需要もひと段落した中での安定度を考えれば、コンビニが1人勝ちしている状況ともいえるだろう。
景気の急速な悪化をバックボーンに、消費マインドの冷え込みは継続している。そのような中、2012年のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)は約5万店舗と店舗数が増加。百貨店やスーパーの売り上げの減少に歯止めがとまらない今、タスポ効果が一巡し、また、復興需要もひと段落した中での安定度を考えれば、コンビニが1人勝ちしている状況ともいえるだろう。
しかし、店舗間での競争は激しく、不採算店が閉店するケースが多いのも否めない。日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、2012年11月現在のセブン-イレブン・ジャパン 、ファミリーマート 、ローソン 、ミニストップ 、セイコーマート、ポプラ 、サークルKサンクス 、ココストア、スリーエフ など10社の合計店舗数は46,688店舗。既存店ベースでは来店客数11億3,642万人(前年同月比-2.2%)、平均客単価591円(前年同月比-0.3%)、売上高6,713億円(前年同月比-2.5%)となっており、6ヶ月連続でマイナスを記録するなど、決して楽観視できるものではない。
1974年にセブン-イレブンの第1号店を開業したことから始まったコンビニは、長時間営業による利便性の良さ、フランチャイズシステムによる大量出店などで急成長を遂げた。だが2000年以降は、24時間営業のディスカウントショップなどが進出するなど、売上にかげりが見え始めたが、2008年のタスポの登場で一気に好転する。従来、若い世代の顧客が多かったコンビニに、40・50代以上の男性を中心とする客が訪れプラスワンアイテムを購入することで、売上が伸長していったという。また、店内調理品の積極的な開発、オリジナルブランドや有名パティシエ監修によるスイーツの登場、さらに、おでんの出汁、弁当などは品ぞろえだけでなく味付けも変えるなど、地域密着型の戦略を立てることで、その存在感を再び高めていった。
しかし前述にも記したとおり、乱立するコンビニは、互いの顧客を取り合うことが増え共存することは容易ではない。そのような環境下、2012年の特長としては、コンビニエンスストア業界の大手であるセブン-イレブンやローソン、ファミリーマート、ミニストップなどは国内での展開だけでなく、中国、韓国、タイなどのアジアを中心とした海外進出に積極的だったことが挙げられるだろう。
セブン-イレブンはアメリカ発祥のコンビニだったため、同国の店舗数は7,558と群を抜いており、次にタイの6,773店舗、韓国の6,621店舗と続いている。2012月現在で15カ国、合計で48,097店舗となっており、今や国内14,579店舗の3倍以上。現在、世界で一番店舗数の多いコンビニは今年も着実に各国での出店数を増やしていった。
また、ファミリーマートは1992年のタイへの出店を皮切りに、2009年ベトナム、2012年インドネシアと着実に店舗網を拡大。2012年10月末現在、ファミリーマートグループは7カ国で12,419店舗を展開、国内の9,160店舗を上回っている。今後は、2015年度に25,000店、2020年度に40,000店の展開を国内外で目標としているという。今年の6月には韓国における事業パートナーである普光ファミリーマートの社名をBGF retail Co.,Ltd.に変更し、資本関係をさらに強化すると発表、同時に新ブランド「CU」を立ち上げている。また中国では四川省成都市に、「青か(化の下に十)路店」、「董家湾北街店」、「青羊東一路店」の3店舗を開店。同社チェーンとしては中国内陸部へ初めて進出を果たした。さらに伊藤忠商事 、AyalaグループとRustanグループの合弁会社SIAL CVS RETAILERS, INC.の3社で、フィリピン共和国での店舗展開を目的に、Philippine FamilyMart. CVS, Inc.を設立し、エリアフランチャイズ契約を締結。同社は東南アジアにおいて、タイ、ベトナム、インドネシアに次ぐ4カ国目の現地法人で2013年2月を目処に、フィリピン1号店をマニラ首都圏にて開店を予定、5年以内には300店体制を築くという。
国内2位のローソンは、海外進出では出遅れた感が否めない。2012年11月現在で中国374店舗、インドネシア79店舗、アメリカ(ハワイ)3店舗の合計455店舗となっている。しかし11月にはタイの現地小売り・日用品大手のサハパタナピブングループ(バンコク)などと合弁会社を設立しタイでの店舗展開を行う予定。さらにミャンマーやベトナム、インドへの進出も検討中だ。
ミニストップは、2000年3月にRCSIと海外エリアフランチャイズを締結し、同年12月にフィリピンのマニラ市内に1号店を開店。2012年11月現在、マニラ市内を中心にフィリピン332店舗を展開、韓国1,884店舗、中国42店舗、ベトナム14店舗と4カ国2,272店舗となっている。さらに今年はセンコー、カザフスタン共和国に本社を置くRTS有限責任事業会社と、同国におけるミニストップ事業の展開を目的とした「合弁事業会社」を設立、積極的な海外展開を目指す。
国内のコンビニ市場の飽和状態が懸念されているここ数年、その活路を海外進出に見い出してはいるが、国内展開をおろそかにしては本末転倒となってしまう。2013年、主要のコンビニの中には、国内でも積極的な出店攻勢をかけると明言している企業もあり、新規出店に拍車がかかる可能性もある。しかし各社がやみくもに店舗数を増やし競い合うだけでは、成熟市場には決してなり得ない。各コンビニに決定的な特長が無い今、それぞれが独自の商品構成やサービスなどをさらに熟慮し、確固たるオリジナリティを持つことが今後、最大の課題となってくるだろう。(編集担当:宮園奈美)