シーズン全勝での総合チャンピオンも視野に入り始めていたM・マルケスだったが、この日4位と今季初めて表彰台を逃し、また開幕11連勝という新記録の樹立も逃した。
これを契機にMotoGP2014年シーズンの情勢は大きく動いた。前半戦はM・マルケスの独壇場だったが、13戦目のサンマリノGPではV・ロッシが、14戦目のアラゴンGPではJ・ロレンソが今季初の優勝を手にし、さらにJ・ロレンソは第15戦の日本GPでも優勝するなど、巻き返しが見られたのだ。
また、2014年シーズンから特例レギュレーションで参戦しているドゥカティも後半戦は徐々にホンダ・ヤマハとの差を詰めてきている。前半戦は遅れを取ることの多かったドゥカティ勢だが、後半戦はまずまずの戦績。優勝こそ手にすることはなかったが、14戦目のアラゴンGPではドゥカティ勢が2位・3位と好成績を修め、さらにドゥカティのA・ドヴィツィオーゾは、年間ポイントランキングで5位を獲得するなど、2013年シーズンと比較すると大きな躍進が見られた。
最終的には、開幕10連勝によって圧倒的なアドバンテージを築いたM・マルケスが 、第15戦日本GPにおいて2位でフィニッシュし、年間チャンピオンの座を獲得したが、シーズン後半は前半とは大きく違い、M・マルケスが易々と勝てないという展開が多く見られた。
また、総合2位の座をもぎ取ったのは35歳のV・ロッシ。D・ペドロサとの熾烈な争いを制した。
今シーズン、M・マルケスはジャコモ・アゴスチーニの開幕10連勝記録に並び、マイク・ヘイルウッドの史上最年少の10連勝記録を更新、さらに年間13勝でシーズン最多勝記録を更新、最年少での2連覇達成など、数々の偉業を成し遂げている。
また、余談だが軽量級のMoto3クラスでは、M・マルケスの弟A・マルケスが総合優勝を果たし、史上初の兄弟同時チャンピオンという記録も打ち立てている。2014年シーズンのM・マルケスの活躍は語るに尽きない。
こうして見るとM・マルケスの強さは圧倒的なように思えるが、来シーズンも同じようにいくとは限らない。
シーズン後半に見られたヤマハやドゥカティなどの巻き返しを考えると、レースにおけるホンダとの差は確実に縮まってきている。特にドゥカティは特例レギュレーションが2016年まで維持されることから、2015年シーズンも有利な条件で参戦できる。
タイヤやエンジンで有利に戦うことのできるドゥカティは他のチームにとって脅威となる可能性が高い。
また、モビスターヤマハMotoGPは来シーズンもJ・ロレンソ、V・ロッシの態勢で参戦する。シーズンを通して好調をキープしたV・ロッシとJ・ロレンソの復調ぶりを考えると、来シーズンの活躍にも期待がかかる。
さらに、2014年シーズンはA・イアンノーネ(プラマックレーシング)、A・エスパルガロ(HGMフォワードレーシング)、P・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)など、M・マルケス、D・ペドロサ、J・ロレンソ、V・ロッシの4強とは差があったものの、若手の活躍も多く見られた。
来シーズンはこうした若手がどんなレースを見せてくれるのか、これも楽しみの一つになるだろう。
なお、今シーズン注目されたオープンカテゴリーにおいて、年間ランキングでトップに立ったのはP・エスパルガロ(総合ランキング6位)。兄のA・エスパルガロ(総合7位)がこれに続く形となった。(編集担当:熊谷けい)