【MotoGP第16戦オーストラリア】大波乱のレースを制しV・ロッシ今季2勝目

2014年10月20日 11:55

2オーストラリア

表彰台を独占したヤマハ勢

 2014年10月19日、MotoGPオーストラリアGP決勝が行われた。決勝の舞台はフィリップアイランドサーキット。オーストラリア第二の都市メルボルンの南に位置する小島に作られたこのサーキットは、海を臨む景観の良いサーキットだが、その分海からの風の影響を受けやすい。さらに天気も変わりやすく、レースコンディションが読みにくいという難コースだ。

 しかも、このサーキットは全18戦開催されるMotoGPの中で最も平均速度の速いスピードサーキット。高速コーナーとヘアピンを始めとするテクニカルな低速コーナーが混在するため、ライダーの技量が問われるレイアウトとなっている。

 コース全長4,448m、最長ストレートは900m。左コーナーは7つ、右コーナーは5つ。
 
 このフィリップアイランドでのレースで何よりも問われるのがタイヤマネジメントだ。高速の上、タイヤ負担の左右差が非常に大きいサーキットのため、タイヤのチョイスと使い方がレースの行方を大きく左右する。昨年はタイヤが10周前後しかもたないという非常に厳しいコンディションでのレースとなっており、今回もタイヤがレースの大きなカギとなると見られていた。

 気温16℃、路面温度29℃というコンディションで迎えた決勝。3番グリッドからスタートしたホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)がホールショットを決め、ポールポジションを獲得したマルク・マルケス(レプソルホンダ)、4番グリッドスタートのブラッドリー・スミス(モンスターヤマハテック3)がそれに続いた。

 2番グリッド、自己最高位でスタートを迎えたカル・クラッチロー(ドゥカティ)はスタート直後に7・8番手に沈み、8番グリッドスタートのバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)は好スタートを切ってレース序盤で5番手まで浮上した。

 レース序盤、M・マルケスがJ・ロレンソを抜いてトップに立つ。3番手にはB・スミス、4番手には9番グリッドスタートのポル・エスパロガロ(モンスターヤマハテック3)といった若手がつけた。

 トップに立ったM・マルケスは逃げを見せて後続を突き放しにかかる。スタートで5番手につけたV・ロッシは徐々に順位を上げ、3周目には3位まで浮上。

 4番手以降はP・エスパロガロ、B・スミス、C・クラッチロー、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、アレイシ・エスパロガロ(HGMフォワードレーシング)、ダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)、アンドレア・イアンノーネ(プラマックレーシング)などが順位を目まぐるしく変える大混戦となった。

 この混戦の中、波乱が起きたのは6周目。A・イアンノーネがコーナリングミスでD・ペドロサに接触し転倒。マシンが大破してリタイアを余儀なくされた。さらにこの接触によって、D・ペドロサのマシンもダメージを受け、ピットに戻ったもののレース復帰はできずに痛いリタイアとなった。年間ポイントランキングで2位を争うD・ペドロサだが、早々にレースを終えてしまった。

 レース中盤にはJ・ロレンソとV・ロッシの2番手争いが激化し、抜きつ抜かれつの手に汗握るバトルが展開されたが、この隙にM・マルケスはリードをじわじわと広げ、独走態勢を築いた。

 また、レース中盤には5番手~9番手のバトルも激化した。
 
 17周目、V・ロッシがJ・ロレンソとの熾烈なバトルを制して単独で2番手に浮上したが、トップを行くM・マルケスとの差は4秒近くあり、M・マルケスのリードは盤石かと思われた。

 しかし、18周目にトップ独走中のM・マルケスがスリップして転倒、リタイア。レプソルホンダは2台ともレースを終えることとなり、ノーポイントとなってしまった。マルケスの転倒によってV・ロッシがトップに立った。

 さらに波乱は続く。20周目には8番手につけていたステファン・ブラドル(LCRホンダMotoGP)がA・エスパロガロに接触して転倒。この接触によってマシンが大破したA・エスパロガロも走行不能に陥り、悔しいリタイアを喫してしまった。

 この大波乱の中レースは終盤に差し掛かり、トップにV・ロッシ、2番手にJ・ロレンソとモビスターヤマハ勢がレースを引っ張る展開となった。C・クラッチローは3番手、P・エスパロガロは4番手、B・スミスが5番手につけた。

 だが、2番手のJ・ロレンソは終盤になってレースペースが上がらず、この隙に3番手のC・クラッチローはJ・ロレンソとの差を大きく詰めた。23周目、残り5周の時点でC・クラッチローはJ・ロレンソを抜いて2番手に浮上した。
 
 レースも残りわずか、荒れたレースもあと3周という時点でまたもや大波乱が起こる。ペースの上がらない3番手のJ・ロレンソを猛烈な勢いで追い上げていたP・エスパロガロが転倒し、リタイア。

 さらに、ラストラップには2番手を走行中のC・クラッチローがまさかの転倒。ゴールを目前に悔しいリタイアとなってしまった。

 レースは序盤から勝負強さを見せ、始終安定した走りを見せたV・ロッシが今季2度目の優勝。2位は苦しい展開に陥ったものの、最後まで堅実な走りを見せたJ・ロレンソ。3位にはB・スミスが入り、念願の最高峰クラス初の表彰台をもぎ取った。

 今回のオーストラリアGPでは、ヤマハ勢が表彰台を独占した。ヤマハは第13戦サンマリノGPから4連勝中で、今季後半戦は安定した強さを見せている。
 
 今回のオーストラリアGPは上位スタートのライダーが次々に転倒し、リタイアが相次ぐ今季最も荒れたレースとなった。

 今回のレースで大きく動いたのが年間2位のポイント争いだ。第15戦終了時点で、230ポイントでV・ロッシと並んでいたD・ペドロサだが、リタイアでノーポイントに終わったため、優勝したV・ロッシ(255ポイント)との差が25ポイントと大きく開いてしまった。

 さらに、今レースで2位に入ったJ・ロレンソは17戦終了時点でトータル247ポイント。D・ペドロサを抜いて年間ポイント3位に一気に浮上しており、もらい事故でリタイアとなったD・ペドロサにとっては厳しい結果となっている。

 今回のオーストラリアGPではポイントランキングが大きく変動したため、そのランキングの行方からも目が離せなくなってきた。

 次戦のMotoGP決勝は10月26日、第17戦はセパンインターナショナルサーキットでのマレーシアGPだ。

 年間チャンピオンは決定したMotoGPだが、ポイントランキングの2位争いは終盤に向けて激化しており、その行方は見逃せない。(編集担当:熊谷けい)