TNGAを推し進めるために、トヨタグループが再編を加速している

2015年01月03日 18:47

86-brz

トヨタの自動車生産ラインには多くの部品メーカーから集まるパーツが並ぶ。傘下の部品メーカーを収斂、合従連衡が急加速する

 トヨタグループは、昨年上半期の世界販売で過去最高の509万7000台を記録、3年連続で首位を堅持している。8月の決算報告で2014年暦年の販売計画をアジア市場の低調傾向が今後も続くとしたうえで、当初計画から11万台減となる1022万台(前年比102%)へと下方修正した。また、2013年から3年間わたって、工場新設を凍結している。販売台数を追う方針を捨てて、「いいクルマづくり」に専念すると宣言。社長の豊田章男氏は今期業績予想について「意志を持った踊り場」と位置付け、「短期的な業績に一喜一憂せず、研究開発投資など“必要なコト”は1年かけてしっかりとした仕事をする」とした。

 トヨタが云うところの“必要なコト”はいくつかあるが、重要な施策として挙げられるのがTNGA。自動車開発における設計共通化手法「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」だ。これによる開発効率向上システムことで、2014年11月報道が相次いだトヨタ自動車傘下のグループ企業再編にも大きな影響を与えている。

 グループ企業の再編とは3つの中軸事業であるディーゼルエンジン、マニュアルトランスミッション(MT)、ブレーキなどの開発生産で事業が重複しているグループ子会社の業務を整理一本化するというのが主旨だ。省エネや安全技術、自動運転や燃料電池などの開発競争がグローバルに過熱しているなか、競争力を高めるために「コストの低減と技術的な優位性」を追求する“集中”を実施するということだ。

 集中させる3事業でもっとも重要なのは「ブレーキ」だ。これまでブレーキシステムは、傘下のデンソーとアイシン精機が開発・生産してきた。その両社のブレーキ事業を統合するという。具体的には2016年1月以降に、デンソーの電子制御ブレーキの開発および生産部門をアイシン子会社「アドヴィックス」に移管するというもの。

 グループ企業の再編の最大の狙いは、「強い部品づくり」にある。トヨタはクルマの生産において75%ほどのパーツをトヨタ本体以外から調達している。従来、グループ企業からの納入が多かったが、燃料電池車などの開発では、これまで自動車業界とは異なる技術が必要になってきた。そのため、グループ内企業の集約は競争力アップのために必須とみたようだ。

 また、アイシン精機やトヨタ紡織など3社は12月19日、各社が製造してきた自動車用シート事業をトヨタ紡織に集約すると正式発表した。アイシンは2016年中にシロキ工業と経営統合し、ドアフレームなどの外装事業をシロキに一本化する。グローバルで勝てる部品づくりを各社で徹底し、トヨタ本体の競争力もあわせて底上げする狙いがある。

 両社が手がける車体部品は受注競争が厳しい分野でもある。一部の新興国では地場メーカーが低価格を武器に攻勢を強めている。アイシンによると「市場環境の厳しさを考慮し、(今回の)統合を提案した」という。アイシンの企業規模は3兆210億円(両社の15年3月期見通し)と3兆円を超え、サプライヤーとして独コンチネンタルなどに次ぐ規模だ。

 シートでは、アイシンとシロキのトヨタ車向けシート骨格事業をトヨタ紡織に集約する。あわせてトヨタ車体も紡織に骨格事業を移管する方向で協議を進めている。2016年以降にはシロキが持つシート調整機構や、アイシンの電動調整機構の生産もトヨタ紡織に移す。機構部品やシートフレームから最終組み立てまで1社で手がける形を整え、グループ内の重複をなくすことでコスト競争力を高めるというのだ。

 トヨタ紡織の自動車シート事業は、米ジョンソン・コントロールズ(JC)や米リアに次ぐ3位。開発部門を統合し、技術を手に入れることで、欧米の競合メーカーと戦える体制を目指す。これは、冒頭で述べたブレーキ、ディーゼルエンジン、MTにおける再編とおなじ。デンソーやアイシンなどグループ各社の役割分担を明確にし、経営資源を集める戦略で、今回のシート再編もその一環だ。

 グループ内での競合を避け、研究開発費や生産設備を有効に使える「強い専業部品メーカー」を傘下に置くのがトヨタの狙いだ。クルマ作りのレベルを上げるには、世界で勝てる部品を採用する必要がある。その目的に合致するサプライヤーを作る。このグループ再編はトヨタが進める体質強化の戦略だ。(編集担当:吉田恒)