国内酒類大手が2015年の成長商品と位置づけているジャンルは、ズバリ「発泡ワイン」。発泡ワインの代表格は、高価で品質も高い仏シャンパーニュ(シャンパン)だが、各社が注目するのは、1万円~数万円もするシャンパンではない。1本1000~2000円程度の価格の普及ラインだ。いわゆる、フランスでも生産地をシャンパーニュ地域に限定したシャンパンではなく、その他のワイン産地で生産する「バン・ムスー(Vin Mousseux)」(ムスーは仏語で“泡”の意)やイタリア産「スプマンテ(Spumante)」、スペイン産「カヴァ(Cava)」などのほか、ニューワールドと云われるチリ、オーストラリア産のリーズナブルなスパークリングワインだ。
サッポロビールは、2014年のビールテイスト総需要は、前年比99%強と推定していたが、ワイン事業の売上は前年比107%となった。国産ワインでは「ポリフェノールでおいしさアップ」などの機能系ワインの好調に加え、2012年より発売を開始した樽詰スパークリングワイン「ポールスター」の展開を拡大している。ワイン好調のだが発泡ワインは更に伸びており2014年は2割以上の販売だという。
キリングループのメルシャンは60品目以上の発泡性ワインを扱っている大手。この年末年始商戦で、昨年よりも1割多い1万店でスパークリングワイン販売拡大めざした。販売店頭に専用の棚を設置したり、発泡ワインを冷やすための専用バッグを提供するなどの販促策を仕掛け、同時に都内を中心にレストランや居酒屋でスパークリングワインをグラスで販売している。
発泡ワインはメルシャンのワイン販売量の5%程度を占める。ただ、その伸び率で見ると2014年通期で30%程度の伸長だという。同社が扱うワイン酒類のなかで最も勢いがあるジャンルだ。イタリア産「ランブルスコ」(750ml)で920円(税別)程度の割安な赤・白を販売して2015年も2ケタアップを狙う。
サントリーは年末から六本木に期間限定の「バル」を出店。スペイン産の世界一のスパークリングワイン・ブランド「フレシネ」(750ml)1790~3700円程度(税別)をグラス一杯400円で販売した。また、小売現場ではサントリーとフレシネ社で共同開発した970円(税別)の「デリカスパークリング・ルシア」を販売している。サントリーの発泡ワインは2014年に前年に比べて6%ほど伸びており、2015年以降はさらに伸びるとしている。
アサヒビールも発泡ワインの販促に乗り出した。年末から料飲店向けにグラスを升に入れて、スパークリングワインをグラスから溢れるまで注いで提供する「こぼれ升スパークリング」を展開する。
国内酒類業界では、ビール系飲料市場が縮小傾向にあるなか、一方でウイスキーをソーダで割ったハイボールや焼酎を炭酸で割る酎ハイなどは伸びている。飲みやすく食事にも合わせやすい炭酸割り飲料は、ビール離れしている若者にも訴求しやすい側面がある。各社はリーズナブルな価格でビールよりもオシャレ感がある「スパークリングワイン」を新たな炭酸系酒類の定番として定着させ、酒類マーケットを広げる。(編集担当:吉田恒)