2014年の日本経済は日経平均株価が一時18000円を捉え、業績面でも過去最高益を更新する企業が続出するなど大企業を中心に力強い回復を見せた。しかし、その一方で国内の消費・需要動向は弱く7~9月期のGDP(国内総生産)も前期比0.5%減、年率換算で1.9%減と、グローバルに展開する大企業と日本国内の間で経済の二極分化が進行している様子が伺える。
この二極分化は実は雇用の分野でも顕著となっている。昨年12月に総務省が発表した11月の「労働力調査」の結果によると完全失業率は3.5%で前月から変化は無く、就業者数は6,371万人で前年同月比で同値となった。一見すると雇用情勢には特に変化は起きていないようにも感じるが、正規雇用と非正規雇用という雇用形態別の観点で見てみると、正規雇用は3,281万人で前年同月比で29万人減少する一方、非正規雇用は前年同月比で48万人増加し2,012万人となっている。正規雇用者と比べ非正規雇用者は将来の生活に対して不安を感じている人が多く、この事が内需の活性化を阻む大きな枷となっているのは間違いなさそうだ。
雇用の不安定化については厚生労働省発表の「一般職業紹介状況」を見ても明らかだ。ハローワークにおける求人や求職、就職に関する状況を取りまとめた同資料によると、11月の有効求人倍率は1.12と売り手市場の基準である1.0を上回ってはいるものの、正社員に限るとこの値は0.69にまで低下する。景気が比較的良好な東京等の大都市圏でも1.0あるかどうかといったレベルで、地方に目を移せばかなり厳しい現状であることに疑問を挟む余地は無い。
また、職種ごとのミスマッチも大きな問題となっており、宿泊・飲食サービス業や、医療・福祉では求人が増えているのに対し、情報通信業や学術研究・専門・技術サービス業では大きく減少するなど、労働市場の偏りによって単純に求人倍率だけでは測れない複雑な状況となっている。
今年は労働者派遣業に関する法改正が実施される公算が大きく、派遣期間の上限を迎えた労働者が希望した場合、派遣元事業主は新たな就業機会を労働者に提供する義務が課せられるようになる。しかし、雇用の安定を決定付けるほどの影響力は期待出来ないため、政権には更なる雇用対策を緊急に取りまとめてもらいたいところだ。
現在、平均賃金自体は上昇傾向にあるものの、それ以上に物価の上昇や消費増税の影響が大きく、実質的な所得はマイナスになっている。今後は有効求人倍率だけでなく、正社員の求人状況や実質的な賃金の動向にも注意を向ける必要があるだろう。(編集担当:武田薩樹)