2014年の年末12月、そして新年1月5日に、がん治療の進化に明るい光をともす二つの研究発表があった。
まずひとつ目は、大阪市立大学医学研究科 腫瘍外科学の平川弘聖教授、八代正和准教授らのグループが昨年12月に公表した研究だ。
平川教授らは、がん抑制物質の一つである「プロスタグランジンD2」の合成を促進する酵素の投与により、動物実験レベルで胃がん治療に成功したという。これによりチームは、「がん細胞自身からがん抑制因子産生を促す治療法」を発見したことになり、これは、今までにない新しいがん治療法なのだという。
この研究成果は国際学術誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」電子版に、2014年12月16日(米国東部時間)先行公開された。胃がんは日本で年間約5万人が亡くなる死亡率第2位のがんだが、今回の実験成功により研究グループは「特効薬の開発が期待できる」としている。
そして二つ目の研究発表が今月3日、九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らの研究チームによって行われた。それによると研究チームは、主に肝炎治療薬として使われている「プロパゲルマニウム」(CCL2阻害剤)を使い、「がん転移を強力に抑制することに成功した」という。
つまり、肝炎治療薬「プロパゲルマニウム」が、がんの転移抑制剤としてフルに活用できるかもしれない、という発見だ。この発見に至る経緯を簡単に説明しておこう。
がん治療においては、がん細胞だけでなく、がん細胞周辺にできる「がんニッチ」と呼ばれる細胞群も消滅させる必要があるという。そこで今回、研究チームが注目したのは「Fbxw7」と「CCL2」と呼ばれる二つのタンパク質だ。その結果、Fbxw7の発現量が低い人は、がんの転移や再発がしやすくなることを発見した。そしてFbxw7が低くなると、CCL2が過剰に分泌されてがんニッチを作り上げていたことを研究チームは発見する。
そこで、CCL2の働きを阻害するため、マウスにCCL2阻害剤である「プロパゲルマニウム」を投与すると転移先でのがん細胞の増殖が抑えられたという。研究チームでは「プロパゲルマニウム」は既存薬でもあることから、早期に新たな臨床治験に入る予定だ。
今回の二つの発見が、現代人、そして日本人にとっての難敵、がん治療を大きく進化させてくれる新たな光となることを願いたいものだ。(編集担当:久保田雄城)