富士フイルム、放射性物質を体内投与する「放射性薬品」でアルツハイマー病制圧へ

2014年12月16日 07:59

 富士フイルム<4901>は11月5日、約60億円を投じ、国内2カ所(大阪府・川崎市)に放射性医薬品の研究開発拠点を新設すると発表した。子会社の富士フイルムRIファーマは製薬企業のイーライリリー・アンド・カンパニーと、同社のPET(陽電子放射断層撮影)検査用放射性医薬品の日本国内における共同開発契約を締結した。

 PET検査とは、18F(フッ素)などポジトロン(陽電子)を放出する特定の原子を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で、各種疾病の機能診断に役立つ。また、従来の核医学検査と比べて高い感度と空間分解能を有しており、より診断に適した機能画像が得られることから、各種疾病の診断、治療方針の決定や予後の判定などに大きな役割を果たす。

 では、放射性医薬品とは何か?これはRI(ラジオアイソトープ=放射性同位体)を用いた医薬品で、同社で扱う放射線医薬品はすべて注射器などで体内投与するものだ。放射性医薬品は体の中に入った後、放射線を放出、それを検出することにより、体の外から見えない病気の場所や機能状態をPETなどで調べることができる。放射性物質を体内投与することに不安を感じる人も多いと思う。しかし同社の製品は放射線が高感度に検出できること、半減期の短いRIを用いること、一定時間の後は体の外に排泄されることなどから安全を保障することができるという。ちなみに放射線医薬品を使った検査の被曝量は0.2~8mSv/回。X線CTスキャンの検査は約10mSv/回だ。

 β線などを用いた治療はがんなどに用いられる。しかし同社が注力しているのはアルツハイマー型認知症の早期発見だ。アルツハイマーは脳内にβアミラーゼというタンパク質が蓄積されて起こるもので、やがて脳が空洞化していく。βアミラーゼは発症の15~20年前から蓄積されるようになる。15~20年前からアルツハイマーの進行を遅らせることも可能になる。アルツハイマー診断精度の向上に同社のPETや放射性医薬品の使用が貢献することが期待される。同社はアルツハイマーの治療薬「T-817MA」も開発しており、その相乗効果も期待できる。

 富士フィルムは医薬事業では「がん」「アルツハイマー」「感染症」を医療分野の重点領域としてとらえている。(編集担当・久保田雄城)