環境省は2015年度当初予算案に、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩教授(名古屋大学)らの半導体開発研究へ約14億円を助成費として加える方針であることを明らかにした。研究チームは天野教授の名古屋大のほか、大阪大、法政大の研究員や、電機メーカーが参加。共同で開発を進めていく。
研究は、青色発光ダイオード(LED)に使用している窒素ガリウムを利用した「パワー半導体」の開発により、エネルギーの効率化を測るというもの。環境省の試算によると、この新たな半導体の普及が実現すれば、およそ5年後には原発4基分の大幅な省エネが可能となる。
半導体は電気自動車や太陽光発電をはじめ、冷蔵庫やエアコン、テレビ、パソコン、掃除機、洗濯機などあらゆる電機製品に使われている。しかし現在の半導体はシリコン製のものがほとんどで、稼働中の発熱により電力損失が発生してしまうという難点がある。このため、ファンなどの冷却装置を取り付けることが必要だ。しかし、発熱しにくいパワー半導体に切り替えた場合、電力損失を約85%まで抑えることができ、同時に冷却装置も必要なくなる。電力の効率化に加え、大幅なコストダウンが期待できるのだ。
パワー半導体には、文部科学省からも熱いエールが届いている。同省は実験設備費用として約12億円を14年度補正予算案に計上。パワー半導体実用化には、7段階の工程が必要で、結晶成長、評価・解析、デバイス化、システム装置など、各段階の設備費用を支援するという。
半導体開発への支援は昨年度も環境省が6億円を助成するなど、一定の評価を示してきたが、天野教授のノーベル賞受賞により、いっそう拍車がかかった格好だ。パワー半導体の技術をいち早く日本が実現することで、国際競争力は飛躍的に高まるだろう。産学官の連携で、今後の先行きが楽しみだ。(編集担当:久保田雄城)