昨年に引き続き、車載用及び産業機器用途の関連事業が軒並み好調に推移している。その背景としては、北米の自動車市場が好調に拡大していること、また国内外で車の電子化やEV化の加速に伴って電子部品の需要などが増大していることが挙げられる。
中でも大幅な伸びを見せているのが日本電産<6594>だ。同社が1月22日に発表した2015年3月期の連結純利益によると、車載用やエアコン用のモーターが引き続き好調に推移して売上に貢献し、22%増の690億円と見込んでいた従来の予想を60億円も上回る前期比33%増の750億円と大幅な増益となった。主力製品は、日本電産のコア技術である高性能ブラシレスDCモーター技術を適用したEPS(電動パワステ)用モーターをはじめ、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)用モーター、電動オイルポンプ用モーター、コンパクトサイズブラシ付モーターであるが、EVやHEVの駆動部に用いられる磁石を使わないSRモーターの開発も行っており、今後のコア製品と見込んでいる。
京セラ<6971>も、半導体部品のほか、アルミナ・窒化珪素の2種類の材料を用いた京セラ製セラミックヒーターやグロープラグ、グループ企業である京セラディスプレイなどで車載用部品事業を拡大している。とくに京セラディスプレイは車載用LCDにおいて、耐衝撃性や幅広い動作保証温度などの面で世界的な信頼も厚く、国内はもとより海外の市場でも着実にシェアを伸ばしている。
太陽誘電<6976>は昨年11月、車載向けで実績が豊富なエルナー<6972>と資本・業務提携で合意した。同業である同社はお互いのノウハウや実績を活かしながら、車載及び産業用途で需要の見込める大型電気二重層コンデンサーやリチウムイオンキャパシターを共同開発していくことを発表している。また、両社の生産拠点や販路の相互活用、さらには材料の共同調達なども積極的に行うことで、利益を拡大するのが狙いのようだ。
また半導体メーカーの中でも現在、最も期待値が高いのはローム株式会社<6963>ではないだろうか。ロームはずばり自動車と産業機器を重点分野に掲げており、17年度には売上高比率40%を目指すとしている。同社の澤村社長が「自動車と産機に経営資源を積極的に投入する」と明言している通り、昨年11月から、タイで重点分野への供給拡大を目的としてLSIの新工場棟の新設に取り掛かっている。同社が工場棟を新設するのは実に8年ぶりで、投資額は150億円になる見込みだが、この工場が完成すれば、LSIの生産能力が4割向上する見通しだ。また、車載分野の主力製品である電源ICやLEDドライバなどアナログLSIの主力工場として稼働する浜松工場などでも設備を増強している。
面白いのは、これまでカスタムLSIを得意としてきた同社が、ここ数年、積極的に他社との提携を行っていることだ。2013年2月には愛知製鋼?5482?とセンサ分野事業で業務提携するなど、開発・生産体制の強化と販路の拡大を図っている。また、すでに米インテルや米フリースケールなど同業である世界の半導体大手との協業も行なわれており、一足早く攻めの姿勢に入っている。日本の電子部品企業にとって、それだけ大きなビジネスチャンスだということだろう。今後も車載・産機向け部品の市場の拡大を見越したこのような戦略的提携は益々活発化しそうだ。(編集担当:藤原伊織)