JT(日本たばこ産業)が、2015年9月をめどに飲料事業から撤退することを発表した。今回同社の自販機事業の撤退は見送られたが、近く飲料事業に続き自販機事業も動きがある可能性が高く、JTの自販機事業をめぐり、水面下で大手飲料メーカーが買収や提携に乗り出しているようだ。
JT(日本たばこ産業)<2914>が、2015年9月をめどに飲料事業から撤退することを発表した。清涼飲料水「桃の天然水」や缶コーヒー「ルーツ」などといった人気商品はあったものの、近年はヒット商品にも乏しく、飲料業界競争激化の中、撤退を決めた形だ。今後は主軸事業である国内たばこ事業の収益力強化を目指し、拠点工場などの再編を行う。また、この動きに伴って15年3月末での希望退職者も募り、JT全体の2割に相当する1754人の従業員から募集があったとも発表した。
飲料業界は、サントリー食品インターナショナル<2578>、アサヒグループHLDG<2502>、伊藤園<2593>など大手メーカーの寡占状態にあり、上記3社だけで全体の50%近いシェアを持っている。元々飲料事業に特化していないJTには分が悪く、撤退は合理的との見方も強い。JTは国内たばこ事業だけでなく、近年では海外企業のM&Aなども積極的に行い、経営を多角化している。そうした面からも、飲料事業はデメリットの方が大きいと早めに見切りをつけた格好だと言えるだろう。
JTの飲料事業や、「桃の天然水」や「ルーツ」などブランド商品の他社譲渡についてはまだ不透明だが、大手飲料メーカーが狙っているのはそれよりもJTの自販機事業だ。JTは、全国で26万4千台もの自販機を運営するジャパンビバレッジホールディングスの親会社だ。今回自販機事業の撤退は見送られたが、近く飲料事業に続き自販機事業も動きがある可能性が高い。これをめぐり、水面下で大手飲料メーカーが買収や提携に乗り出しているようだ。
国内の清涼飲料水の自販機数は約250万台と言われ、ジャパンビバレッジが保有するシェアは実にその10%以上。大手メーカーからすれば、自社自販機事業と統合することで大幅なシェア拡大と、コスト削減が見込める。すでにサントリー、アサヒグループ、キリンHLDG〈2503〉などが買い手候補としてささやかれている。JTの自販機事業を買収した企業が、飲料業界争いの中で一歩リードする可能性も高く、その動向に注目が集まっている。(編集担当:久保田雄城)