2014年暦年で世界一の自動車販売を3年連続で達成したトヨタ。ハイブリッド車(HV)で世界を牽引し、昨年は燃料電池車(FCV)「MIRAI」を発売。水素社会への先鞭を付けた。
このようにエコカーで先行しているように見えるトヨタだが、エコカーで“やり残していること”はたくさんある。そのひとつが軽油で動くディーゼルエンジンを搭載した乗用車の生産だ。これまでのトヨタの最優先課題は、HVのパワーユニットのラインアップを確立し、その採算性を確保することだった。それを、ほぼ達成した今、FCVに乗り出した。ところがクリーンディーゼル搭載乗用車の開発では、欧州メーカーや国内のマツダに大きく遅れをとっている。
欧州で走っている乗用車の半数近くはクリーンディーゼル車で、メルセデスやBMWなどの高級車だけでなく手ごろな価格の車種がラインアップしている。ボルボは主力車「V40」や「60シリーズ」に設定。独フォルクスワーゲン(VW)も人気モデルのゴルフやパサートにディーゼル車を設定する。フランスはディーゼル車比率が高く、プジョーやルノー車の7割近くがディーゼル車だ。
そして、日本のトヨタが本気でクリーンディーゼル車の開発に乗り出してきた。2015年中に発売予定の新型SUVに8年ぶりにディーゼルエンジン搭載車をラインアップする。燃料費の安さや走りの力強さがユーザーに理解されるようになり、数年前まで低迷していた市場は拡大基調にある。ハイブリッド車などと並び、エコカー選びの有力な選択肢のひとつになる。
トヨタの新しいクリーンディーゼル搭載車はランドクルーザー・プラド。5月にもタイなどで発売する新興国戦略車「IMV」シリーズに搭載する新エンジンを使う。同エンジンは豊田自動織機から調達する。IMVとは「イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル(Innovative International Multipurpose Vehicle)」の略で、ひとつのプラットフォームをから、ミニバンやSUV、ピックアップを世界の新興国の多様なニーズにあわせて生産する新興国専用の世界戦略車だ。
トヨタは欧州で発売するSUV「RAV4」や小型車「オーリス」などに、ディーゼルエンジンを搭載している。が、国内では2007年以降、需要が見込めないとしてガソリン車とHVだけをリリースしてきた。しかし、最近はマツダのクリーンディーゼル搭載車「CX-5」などの人気が高く、まもなく発売するコンパクトSUV「CX-3」は、1.5リッターディーゼル専用車だ。ディーゼル車は出力の高さよりもトルクの太さが特徴で、一般的にアクセルを踏んだ時の加速感がガソリン車より力強い。マツダはこうした特徴をアピールして販売を強化してきた。そこで。トヨタとして新エンジンの開発に合わせてディーゼル車の投入を決めたというわけだ。
クリーンディーゼル普及促進協議会(東京・渋谷)によると、日本で現在購入できるディーゼル車は18車種。今年は7車種程度が新たに加わる見通しで、消費者の選択肢は大きく広がる。(編集担当:吉田恒)