デトロイトショーでワールドプレミア(米国だけの販売だから“米プレミア”)となった「新型日産タイタン」、5リッターV8ディーゼルターボを搭載する。燃料が安いから売れるというが、あまり健全な市場環境とは思えない
日産自動車が、「北米国際自動車ショーで、フルサイズピックアップトラック「2016日産タイタンXD」を披露した。同モデルは、3種のキャビン、2つのフレームサイズ、3つのパワートレイン、5つのグレードを揃えるピックアップ「日産タイタン」のラインナップのひとつだ。軽量化された新しい5リッターV型8気筒ディーゼルターボエンジン加えて、V8とV6ガソリンエンジンをラインアップする。最大牽引力は1万2000ポンド以上を実現し、2000ポンドの最大積載量を持つ。
この「2016日産タイタンXD」は、ミシシッピー州のキャントン工場で組み立て、インディアナとテネシーで製造するエンジンを搭載する予定。2015年後半より米国とカナダで販売をスタートするという。
新型が搭載するカミンズ社の新しいディーゼルエンジンは、高圧領域と低圧領域の間での緻密なバランスの確保し、ターボラグの低減に貢献。また、ロータリータービンコントロールにより安定したパフォーマンスを提供しつつ、排気ガス温度を綿密に調整する。さらに、ボッシュ製燃料供給システムを採用し、正確な燃料制御と燃焼行程ごとに複数の燃料噴射を実現した。燃費効率が高まり、ディーゼルエンジン特有の音を低減。また、「ボッシュ製セラミックグロープラグ」の採用で、ディーゼルの課題とされる低温度下での難始動も解決した。
同じように、トヨタも同モーターショーにおいて、新型「タコマ」を初公開。同車に、「TRD」の名前を冠したグレードがデビューを飾った。
タコマは、トヨタの北米市場における中型ピックアップトラックの中核的存在だ。現行タコマは2世代目モデルで、2004年に発表された。米国の中型トラックセグメントでは、10年連続のベストセラー車。そのタコマがおよそ10年を経て、3世代目にモデルチェンジするという。
搭載エンジンは、2.7リッター直列4気筒ガソリンに加えて、セグメント初となる3.5リッターV型6気筒ガソリン車を設定。この3.5リットルV6は新開発ユニット。直噴の「D-4S」システム搭載でアトキンソンサイクル化されている。
組み合わせるトランスミッションは、6速オートマティック。3.5リッターV6車は、6速マニュアルも選択できる。トヨタによると、従来モデルよりもパワフルになりながら、燃費性能を引き上げたという。
この新型に用意されたのが、「TRDスポーツ」と「TRDオフロード」の2種類のTRDグレード。トヨタによると、35年以上の歴史を持つトヨタのオフロードレーシングの伝統を反映させたグレードだという。
米国自動車市場を概観すると、米オートデータが1月発表した12月の米国新車販売台数は、前年同月比110.8%の150万7339台となった。2014年1~12月の米国市場の累計販売は、1652万2000台で前年同期比105.9%。2007年の販売1615万台を上回り大不況前の水準に完全に回復したという。
この理由は労働市場が改善していることに加えて、66カ月や72カ月の長期の低金利自動車ローンやリースが提供されていること。また、ガソリン価格の下落などで消費者心理が改善していることが指摘されている。
車型別の販売見ると、人気のフルサイズSUVとピックアップトラックの販売がガソリン価格低下で後押しされて好調。なかでもピックアップトラック販売が前年同月比113.9%と好調を超して異常な伸びとなった。これは自国米国メーカーの得意分野であり、実際に米自動車3社の年間売上が5~6%増加して、市場を引っ張った。米フォード・モーターなどは、Fシリーズと呼ばれるピックアップの売り上げが16%も伸びたという。
GM幹部の発言として伝えられたコメントは、「燃料価格の低下が大型ピックアップトラック販売を引き上げた。これは住宅市場の回復に歩調を合わせて改善している。比較的価格が高いクロスオーバー型SUVの好調は、米国人の経済の健全性に対する自信を示している」というものだ。日本人からすると、あまり健全な市場動向とは思えないが……?
こうした米国市場の傾向に合わせた日産、トヨタの新型ピックアップトラック投入だろう。が、「電気自動車」や「燃料電池車」を世界に向けてアピールする自動車会社が、“売れるから”という理由で2トンを大きく超える3.5リッター超のトラックを販売するのは……?とも思える。
メーカーによるとこれらピックアップの燃費も大幅に改善しているとしているが、数字は発表していない。確認できないが日産タイタンの実用燃費は、“おそらく”だが、従来2km/リッターだった燃費だったとすると、それが3km/リッターに50%も“大幅に改善?”しているものと思われる。(編集担当:吉田恒)