キヤノン<7751>は2月10日、監視カメラ世界最大手であるスウェーデンのアクシスコミュニケーションズを約3337億円で買収すると発表した。デジタルカメラ事業は、近年スマートフォンの普及により押されている状況で、今後市場の拡大が見込める監視カメラ事業に本格参入する形となった。
キヤノンの監視カメラ事業への参入は、周到に行われたと言えるだろう。キヤノンは昨年の6月に欧州子会社を通し、デンマークのマイルストーンシステムズを買収している。この会社は、ネットワークカメラ向けビデオ管理ソフト(VMS)の大手企業だ。監視カメラ事業のソフト面をまず買収し、続いて今回の買収でハード面も手にしたことになる。アクシスコミュニケーションズ、マイルストーンシステムズともに業界では監視システム技術の最高峰と言われ、世界中の多くの企業とパートナーシップを結んでいる。キヤノンが今回の買収で、長期的に監視カメラ事業において世界的な地位を固めたことは間違いない。
高度な情報化社会において、監視カメラの重要性と普及は急速に進んでいる。家庭や店舗、企業だけでなく、道路交通の取り締まりなどでも世界中で設置は増加し、市場は拡大している。もちろんプライバシー面などでの問題は依然としてあるが、単純に監視カメラの販売、設置だけでなく、そこに映ったデータの解析や管理も大きなビジネスとなる。その面で、ハードとソフト両方の世界的企業を手にした意味は大きい。
また、キヤノンは米国での日本企業特許取得件数トップの企業でもある。世界的に見ても、IBM、サムスン電子に次いで3位の地位を誇り、2014年には米国で4000件以上の特許を取得している。技術分野が多岐に渡り、常に世界水準の技術特許を取得し続けているが、ここに将来、監視カメラ技術での特許も加わっていけば、さらなる成長と市場の独占も可能となる。
世界的な需要に向け、先見の明を持って動き出したと言えるだろう。今後は、どれだけ早くその需要に見合うサービスを発表できるかが問われる。新たな市場に参入したキヤノンの動向に注目が集まる。(編集担当:久保田雄城)