既存住宅団地の活力維持・向上を目指す!官民連携の国交省モデル事業が始動

2015年02月28日 19:06

河合町画像

平成26年度第2回住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業「かわい浪漫プロジェクト」を開始したパナホーム株式会社。奈良県北葛城郡河合町と官民連携で西大和ニュータウンの再活性化を目指す。(写真左・岡井康徳町長 写真右・パナホーム藤井康照社長)

 パナホーム株式会社<1924>は、国土交通省による「平成26年度第2回住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」で採択された、奈良県北葛城郡河合町の西大和ニュータウン内の星和台・中山台・広瀬台・高塚台(3578世帯)を対象とした既存住宅の活用・流通の促進に向けた事業提案「かわい浪漫プロジェクト」の活動を開始し、2月12日に記者発表を行った。

 同事業は、パナホーム株式会社およびパナホーム不動産株式会社、パナホームリフォーム株式会社の三社が事業提案者になり、奈良県北葛城郡河合町と連携して推進するもの。協力事業者として、大阪ガス行動観察研究所株式会社と一般社団法人移住・住みかえ支援機構も名を連ねている。

 ユネスコの世界文化遺産に指定された法隆寺地域に近い場所に位置する「西大和ニュータウン」は、1960年代の後半に開発された大型住宅団地だ。ニュータウン内に近鉄電車の駅が2つ存在すること、王寺駅を経由すれば大阪の都心部まで一時間圏内で移動できること、さらには1969年に西名阪自動車道も開通し、町内にインターチェンジも設置されたことなどから開発は順調に進み、人口も増加した。しかし、開発から40年余りが経ち、他のニュータウン同様、団地全体の老朽化と住民の高齢化が将来的な課題要素になっている。しかも、ニュータウンの開発に携わった会社はすでに解散している。

 団地の老朽化は何も西大和ニュータウンだけに限ったことではなく、全国共通の社会問題だ。しかし、人口の半数以上がニュータウンの住民が占める河合町にとって、西大和ニュータウンの存続は非常に重要である。現在はそれほど大きな問題では無いし、中年世代以降の人口は安定しているものの、やはり若者の離脱は年々数を増している。将来を見越した恒久的な対策が必要と考えた岡井康徳町長は、以前よりスマートタウンに興味を持っていたこともあり、パナホームに相談を持ちかけた。そしてその後、河合町とパナホームの間で勉強会が開かれ、連携協定を経て、今回の事業提案に至る。

 「かわい浪漫プロジェクト」では、対象地域の住民にアンケートや聞き取り調査を行い、今後、地域住民らとの結果共有や意見交換を通して、魅力あるまちのビジョンを描いていくという。なお、対象地域の住民は、専門家による住宅診断が国の補助により実質無料受けられる(1戸あたり上限10万円)ほか、自宅を売却・賃貸する場合には、耐震改修・バリアフリー改修・省エネルギー改修等、一定の要件を含むリフォーム工事費用の3分の1(上限100万円)の補助を受けることができる。

 また、同プロジェクトでは、対象地域内に相談窓口を開設して、リフォームや売買、賃貸など、住民の住宅に関する相談を受け付ける。さらにコールセンターも設けて対応にあたる。

 2月12日の記者発表において、パナホームの藤井康照社長は、「新規住宅地の開拓だけでなく、老朽化する住宅地に再び命を吹き込むのも住宅会社の責任。行政と住宅メーカーが一致団結することは、今後の住宅事業の試金石にもなる」と同プロジェクトに賭ける熱い思いを語った。また、同社は、このプロジェクトを通して得られたノウハウを、今後、他地域に展開していくことも視野に入れる。

 日本は、今後益々高齢化・少子化が進む。放っておくと10年後、20年後に課題を抱える住宅団地がさらに増えるであろう。「かわい浪漫プロジェクト」の取り組みは、対象地域の将来だけでなく、日本の将来も左右するものになるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)