持ち家などを担保に老後の資金を融資する「リバースモーゲージ」を扱う地方銀行が増えている。少子高齢化に伴う市場縮小が見込まれる中、退職後の「第二の人生」を充実させたいとの高齢者ニーズを掘り起こすのが狙いだ。住宅を子に残す必要のない人が増えていることも背景にある。
リバースモーゲージとは一種の不動産担保ローンのことで、自宅の土地を担保に融資を受け、毎月の返済は利息のみ、元金は債務者が亡くなった時点で、現金または担保不動産を処分することによって返済することになる。貸し出しには、生活費等の補填を目的として年金のように受け取る方法と、住宅建築やリフォーム、老人ホームへの入居保証金などの支払いのために一括で受け取る方法がある。
1981年に東京都武蔵野市が低所得高齢者向けの福祉政策の一環として金融機関と連携して始めたのがリバースモーゲージの始まりだ。バブル期には他の自治体や、信託銀行、地銀などが参入し利用者が広がったが、バブル後の地価下落で担保の宅地価格が下がり、多くの金融機関が融資を回収できなくなり撤退したという経緯がある。しかし近年の地価上昇を受け、メガバンクが相次ぎ参入、地方銀行がそれに追随している。
東京スター銀行<8384>は、今年7月末までに約3500件を契約。13年度は地価上昇で融資を受けられる人が増えたこともあり、契約件数は前年度に比べ4割増えた。担当者は「家を子に残す必要のない人や年金に不安を持つ人を中心に今後も需要が伸びる」とみる。自宅を売らなくてもいいタイプも登場。常陽銀行<8333>は昨年9月、自宅を貸してお金を借り、毎月の賃貸収入を返済に充てるリバースモーゲージを発売。老人ホームなどに移りたいが自宅は手放したくない人から20件以上申し込みがあった。
しかし、普及には課題も多い。原則として死後に自宅が残らないため、契約には子供ら法定相続人全員の同意が必要だ。担保にした自宅の評価額は毎年見直され、融資総額も変わるため、地価が下がれば契約途中で融資が打ち切られるリスクもある。死亡時点で自宅の価値が借入総額を下回っていれば、相続人が不足分の返済を求められることもある。担保不動産を処分するときには債務者も物件所有者もこの世にいない。担保や残債の処理をめぐり相続人間で争いが起こる可能性も否定できない。理屈の上では制度の有効性を認めつつも、実際の利用にはまだまだ高いハードルがある。(編集担当:久保田雄城)