好調な北米販売と円安で、国内自動車メーカー3月期決算、好予想。なかで、ホンダ「ひとり負け」か?

2015年02月28日 12:14

Honda Logo

「ひとり負け」を喫したホンダ。北米を中心とした品質関連費用が増加。主力車種である新型「フィット・ハイブリッド」などの度重なるリコールに加えて、タカタ製欠陥エアバッグの品質問題も追い打ちをかけた

 先般、国内自動車各社から2015年3月期通期業績の最新予想が公表された。乗用車8社のうちトヨタ自動車など5社が営業利益、純利益で最高を更新するということである。全体として、リーマンショック前の2008年3月期以来の最高収益を8社ともに確保するようだ。

 別格の強さを見せるのは、2015年3月期の最終的な純利益の予想を引き上げ、純利益が初めて2兆円(前期比110%)に達すると発表したトヨタだ。円安や米国での販売増が利益を押し上げ、リーマンショック前と比べると、3000億円近く上回る空前の高水準となるという。昨年8月に予想として発表した1兆7800億円から2兆円に引き上げ、大幅増益となる。

 売上高は25兆7000億円から26兆5000億円(103.1%)に予想を引き上げ、過去最高を更新する。従来、トヨタは2015年3月の対ドル為替レートを101円としていたが、今回104円と円安方向に見直した。これにより3月期の営業利益は1350億円上振れする。部品の調達費用を下げるなどのコスト削減によって500億円の増益に貢献するという。

 一方、日野とダイハツを含めたトヨタグループの世界販売台数は、従来予想を15万台引き下げ、1010万台とした。北米は好調だが、国内で消費増税後の販売減から抜け出せず、タイなど、トヨタが得意な東南アジアでも販売が伸び悩むことを織り込んだ。ただ、好調な決算を受け、過去最高額を計画していた研究開発費も200億円上積みし9800億円にする。「中長期的に持続的な成長の実現を図っていく」ための継続的な投資だという。

 日産自動車でも、2015年3月期の連結純利益が前期比108.0%の4200億円になる見通しだと発表。円安が追い風となるほか、原価低減の取り組みを進め、従来予想(4%増の4050億円)から利益を上方修正した。売上高は6%増の11兆1500億円、営業利益は14%増の5700億円となる。従来予想の売上10兆8000億円、営業利益5350億円から引き上げた。今期の想定為替レートは対ドルで108.8円(従来想定は104円)、対ユーロは138.9円(同138円)と、ともに円安方向に見直した。半面、今期の四輪車の世界販売見通しは2%増の530万台と、従来計画の545万台から15万台引き下げた。欧州と中国を含むアジア地域で前回予想から下方修正した結果だ。

 国内自動車メーカーで、営業利益率がトップのSUBARUブランドで世界に浸透しつつある富士重工業、トヨタに続く3位につけるマツダの業績改善が、めざましい。しかしながら、リーマンショック後からの富士重とマツダの“業績回復力”は対照的で、それぞれの施策が自動車ビジネスの体質強化策のお手本となりそうだ。

 富士重とマツダの今期業績予想とグローバル販売計画によると営業利益は富士重が13年3月期から3期連続、マツダは2期連続最高となる。富士重の収益力の指標である売上高営業利益率は13.7%にのぼる。この数字はドイツのメルセデスを凌駕する世界最高レベルだ。マツダは7.2%だが、国内乗用車8社中で3番目。自動車メーカー平均値は5%ほどなので、マツダの値も悪くない数字で及第点といえる成績上位組だ。

 富士重工業は、クオリティを重視した事業スケールの拡大、マツダは1台当たり収益力を改善する筋肉質な経営への転換で最高益を達成した。

 SUBARUは2009年に投入した主力車種レガシィの5代目モデルを、北米市場を優先したサイズに大型化させた。これが転換点となった。その時点で、日本と北米の販売台数は同程度だったが、収益性が高い北米優先のモデル開発にステアリングを大きく切った。成功した現在、戦略的に見えはする。が、当時は「日本軽視」による国内の大幅落ち込みというリスクを指摘する声が多かった。筆者もそう思ったひとりだ。「レガシィも終わった」と書いたし、事実、国内では売れなくなった。ただし、SUBARU車の米国での販売は2008年から7年連続で最高を更新中であり、今期は51万3000台(前期比16%増)と日本の約3倍になる見込み。水平対向エンジンや最高の評価を受け続けている安全性能などが総合的に受け入れられ、ブランド力を高めた結果である。収益を棄損しない量の拡大という好循環をもたらした。

 マツダも連結売上高の見通しを従来よりも500億円多い10.7%増の2兆9800億円に上方修正した。円安効果によるものだ。リーマンショック後に4期連続赤字という苦しみから体質改善を進めたといえる。2006年から着手した「モノ造り革新」と、独自環境技術である「SKYACTIV Technology」の推進である。商品の企画段階から設計、生産に至るまでのコスト改善に加えSKYACTIVによる商品力アップが、安売りしない販売改革に繋がり、収益の伴ったセールスを達成した。

 一方、ホンダの同期売上高は9兆2930億円と前年同期に比べて6.3%増加したが、本業のもうけを示す営業利益は5397億円と7.7%の減少となった。しかも、通期業績見通しについては、売上高は前期比8.9%増の12兆9000億円を見込むものの、営業利益は4.0%減の7200億円、純利益も5.1%減の5450億円と減益となる。これまでより営業利益で500億円、純利益では200億円それぞれ下方修正した。

 昨年10月の段階での増益予想から一転してホンダが減益となるのは、東日本大震災やタイで発生した洪水による生産拠点の一時的な操業休止などのアクシデントが重なった12年3月期以来3年ぶりだ。北米を中心とした品質関連費用が増加していることが大きな要因だとした。主力車種である新型「フィット・ハイブリッド」などの度重なるリコール(回収・無償修理)に加えて、タカタ製欠陥エアバッグの品質問題も追い打ちをかけた。そのため予定していた新型車の投入時期が大幅に遅れ、既存車種の販売にも影響が出た恰好だ。

 こうして国内自動車メーカーの業績を概観すると、ホンダの「ひとり負け」が鮮明となるが、国内販売では日産の凋落も気になる。従来の日産車ファンからも、「日産は、もう日本の自動車メーカーではない」とする声も挙がっているのも事実。(編集担当:吉田恒)