【今週の展望】上昇気流と下降気流がせめぎあう「春の嵐」か?

2015年03月01日 20:15

 サイコロジカルラインは75%(9勝3敗)で買われすぎゾーンの下端75%についたばかりで、25日移動平均線乖離率は+4.7%で買われすぎの目安の+5%にはまだ達していないとはいえ、テクニカルデータを総合すると買い推奨など絶対に出せない水準を示している。それでも「騰落レシオが130を超えても上がることはある」「年金資金大量流入で需給は大きく変化している」「外国人売りが踏み上げで吸収される」「6日は満月だ」などといろいろ言い訳しながら、「2万円」「2万円」と願文を唱えている人がいるから恐れ入る。先物売買にからんで「踏み上げ」という言葉を連発する人もいるが、2013年5月も「踏み上げビッグバン」などとあおられた後で大暴落した。

 1月の東京市場は外部要因にさんざん翻弄された。そのギリシャ問題、ウクライナ問題、FRBの利上げ時期の問題といったリスク要因に一応の区切りがついて小康状態になり、外部が半ば「ゴルディロックス化」している状況なので、夢を見たい気持ちもわからないでもない。しかし、「3匹のクマ(ベア=弱気相場)」はいつ現れてもおかしくない。逃げ出す用意はくれぐれも怠りなく。

 外部要因を抜きにして内部要因だけ取り出しても、今週は「嵐の予感」がある。前週27日に現れていたように、過熱感のもとで売り勢力と買い勢力がせめぎあい始めたからだ。お天気では、上昇気流と下降気流がぶつかりあうところに前線ができ、雷雨を伴う激しい嵐が起きることもある。「春の嵐」の乱高下のもとでは、何かをきっかけに勢力の均衡が崩れれば売りが売りを呼び、「株式市場は常に行き過ぎる」(クロード・ローゼンバーグ)でオーバーシュートすることがある。それは2013年5月23日のカタストロフまでさかのぼらなくても、オバマ大統領がISへの限定空爆を承認した地政学的リスクがきっかけの昨年8月8日の454円安がそうだった。あの時は「鉄壁の牙城」と思われていた日経平均15000円の防衛線が崩されている。

 改めて27日の日経平均終値18797.94円のテクニカル・ポジションを確認すると、5日移動平均線の18647円すら150円も下にあり、17943円の25日移動平均線とは4.7%も乖離。75日移動平均線の17533円はまだ日足一目均衡表の「雲」(17116~17311円)より上にあるが、200日移動平均線は16144円で異次元の低さ。ボリンジャーバンドでは27日終値は25日線+1σと+2σの間でも+2σの18805円にあと8円まで迫っている。この+2σの「第2標準偏差」とは、統計学でその内側に存在する確率は95.45%で、超える確率は4.55%しかない。「孤高の鳥」は上空に高く舞い上がりすぎて、今にも宇宙空間に飛び出しそうだが、太陽に接近しすぎて翼がはずれ海に墜落したギリシャ神話のイカロスのような運命をたどりかねない。それでも「2万円」「2万円」と、あおる人はあおる。

 前週が暴走してオーバーヒート気味なので、今週の上値はせいぜい25日移動平均乖離率+5%の18851円が関の山だろう。前週27日もその近辺で押し返されていた。一方、下値は「18000円の大台を割り込まないと気が済まない」という400~500円安レベルのハードランディングがどうしても連想されてしまい、それなら17953円の25日移動平均線でようやく止まることになる。大台を割り込んでやっと下げ止まるという現象は、日経平均バブル後最安値の6994円(2008年10月28日)や、昨年も8月8日だけでなく、終値610円安の翌日の2月5日の13995円、終値517円安の11月17日の16907円など、よく見られること(ザラ場ベース)。翌日はケロッとV字回復することが多いものの、株式市場は常に行き過ぎる。2月のSQ値は17886円なので、18000円台にこれといったサポートラインが見当たらないのも心細い。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17950~18850円とみる。相場はほんのささいな出来事で1日にして変わり、歓びの刹那も哀しみの刹那も、否応なく過去の出来事として刻まれていく。「千年と千年が過ぎ、それは一夜にすぎなかった/やや多くやや少なく確実にそして深く/道路の上に私の知らぬ過去が流れこむ」(トリスタン・ツァラ「炎を高く A haute flamme」)。(編集担当:寺尾淳)