現在はネット通販全盛の時代だ。また、スマートフォンの利用者拡大により、スマホやタブレット等モバイル経由での購入者も増え続けている。そんな中、小売業界も新たな販売戦略を打ち出すのは時代の必然だろう。実店舗とECとをネットでリンクさせ、ECでの注文品を実店舗で受け取る、実店舗とECの顧客データを統合して個人に応じたマーケティングを展開する、デジタルサイネージ(電子看板)を店内の要所に配置して各モール情報を一括して顧客の端末に送る等、融合的な未来型の販売システムの構築に向け、幾つかの企業が動き出している。いわゆる「オムニチャネル」戦略である。
“小売大手2強”の1つ、イオングループ<8267>は、「オムニチャネル時代の第1号店」として2013年の年末に「イオン幕張新都心店」をオープンさせた。ここでは、様々な電子技術を駆使して店内のあらゆるサービス情報を来店者のスマホに示したり、ポイントカードを通じて一人一人異なるクーポン券を発行したり等、来店者をわくわくさせる仕掛けを随所に施している。特に、品切れ商品を店内設置の端末から別の店舗で検索注文できたり、POPにスマホをかざすとその商品を使ったレシピが表示され、他に買うべき材料が一目で分かる等の仕組みは、まさにオムニチャネルならでは、買う側にも嬉しいサービスであろう。
また、小売大手2強のもう1つの雄、セブン&アイホールディングス<3382>は、数多いグループ企業をネット網で一つにまとめ、商品の受け渡しや各種手続きの窓口を全国に約1万7000店あるセブンイレブンに置くという。この実現に向け、埼玉県久喜市に独自の物流センターまで建設している。他のコンビニ各社がヤマト運輸<9064>など特定の宅配業者の配送受取拠点となっているのに対し、セブンイレブンは自社の物流インフラで同じ機能を果たし、利益を一手に確保する算段だ。これには、ヤマトだけでなく日本郵便も警戒を強めている。
もちろん様々な障壁も待っている。ネット上の購買データと実店舗のレジデータ(POSデータ)を統合するのは、POSデータ業者の思惑も絡んで並大抵ではない。また、ネット商品用のスペース確保や業務の増加、それらへの対応策をどのように各店オーナーに示すのか。他にも、膨大な在庫管理と物流の効率化など、今までのビジネスモデルを根本的に変えなければならない。情報技術が牽引する未来型の販売モデルへの挑戦は、まだ始まったばかりである。(編集担当:久保田雄城)