トヨタ<7203>が2014年度下期と15年度上期の2期連続で下請け各社への値下げ要求を見送った。値下げ要求見送りだけが騒がれている中、下請けに対するトヨタの新たな取り組みが見えてきている。
トヨタはこれまで下請けに値下げ要求をすることで、コストダウンを計り競争力を上げ利益を確保してきた。その中心となるのが「カイゼン」である。「カイゼン」と聞くと生産性向上、コストダウンしかイメージが浮かばないが、その裏では下請けが更なる競争力や技術力を伸ばすことができるような配慮もされていたのである。
その1つが、コストダウンに成功した下請け企業に再開発の投資資金として、その一部を返還していたことである。厳しい要求の中でもコストダウンや技術開発に下請けが取り組んできたのはこのような関係があったからである。さらに、デンソー<6902>やアイシン精機<7259>などのように、トヨタだけでなく他社と取引できるだけの技術力を持つ企業が、グループから育ってきた土壌はここにあったのである。
しかし、近年は数字目標ありきの厳しい値下げ要求だけが続き、下請けは設備投資だけでなく人材を確保することすら厳しい状況になっていた。そんな中、2期連続で下請けへの値下げ要求を見送ったのは、トヨタがグループ全体の開発力や人材確保が重要と考えたからであろう。
値下げ要求見送りで下請けは賃上げに踏み切ることができた。ただ、厳しい経営環境であることは変わっておらず、設備投資には二の足を踏んでいるのが実情だ。さらに、為替の変動による値下げ要求復活の可能性やトヨタが推進する設計改革「TNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャ)」導入など下請けにはさらに厳しい未来が見えている。
トヨタもこの状況に手をこまねいているわけではない。値下げ要求は見送ったが、トヨタの担当者が下請けの現場に入り、作業の無駄の洗い出しやより安価な材料の開発にともに取り組み、更なる「カイゼン」でコストダウンを目指している。
このようなトヨタの取り組みを見ているとグループ全体で人材を育成し、確保し、更なる競争力アップを目指していることが分かる。今は小さな一歩だが、この取り組みは将来、グループ全体の競争力をつけることになるであろう。(編集担当:久保田雄城)