「頑張れば報われる社会」は本当に可能なのか 国会でも格差問題に焦点

2015年02月25日 12:14

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国会での議論はもちろん、消費者の中でも格差問題への関心は急速に高まっている。仏経済学者トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」がベストセラーとなり、株や不動産など持つ資産所得層と、雇用による賃金で生活する労働所得者層との格差拡大について、多くの人々が不安を実感しつつある。

 安倍首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まり、2月16日、民主党の岡田新代表と安倍首相が初めて対決した。岡田代表が大きな焦点としたのは格差問題だ。「頑張れば報われる社会を実現するため尽力する」とする安倍首相に対し、岡田代表は「成長の果実をいかに分配するかの視点が欠けている。日本は今や先進国の中でも最も格差の大きい国の一つになってしまっている」とし、国内の相対的貧困率が過去最悪の16%まで拡大しているデータを挙げ、格差是正の必要性を訴えた。

 国会での議論はもちろん、消費者の中でも、格差問題への関心は急速に高まっている。仏経済学者トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」がベストセラーとなり、株や不動産など持つ資産所得層と、雇用による賃金で生活する労働所得者層との格差拡大について、多くの人々が不安を実感しつつある。

 ベースアップなども進み、好景気を実感しているという人が増える一方で、そうした追い風は一部の大企業や都市部に留まり、地方や中小企業まではまだ届いていないとの声も大きい。厚生労働省が発表している所得金額分布は、2013年時点で、平均所得金額が537万円、年収400万以下の世帯は45.9%、年収400~1000万の世帯は42.8%、年収1000万を超える世帯は11.3%となっている。資本所得層と労働所得層の格差拡大は、10%の年収1000万以上の世帯と、それ以外の90%の格差を今後広げていく可能性が非常に高い。そして、さらに問題となるのが、労働所得層の中での格差だ。

 平均所得金額前後か、それを上回る年収400~1000万の世帯と、それに届かない年収400万以下の世帯の割合は、13年時点では半々程度だが、今後、年収400万もしくは300万円以下の低所得者層の増加が懸念されている。問題は年金生活者の増加に対する受給年金の低下や、中小企業の不振、若い世代の不安定な雇用状況などが挙げられる。安倍首相は「雇用状況は改善している」と強調したが、雇用の改善が低所得者の所得増にはつながっているとはまだ言い難い。

 安倍首相の言う「頑張れば報われる社会」とは、言い換えれば、働いた成果に見合う報酬を得られる社会だろう。ならば、低い所から労働所得を上げていくための施策が必要となる。高い所からワインを注ぎ、低い所には一滴も行き渡らない経済政策では、平均所得額は上がっても、平均所得額よりはるかに低い所得しか得られない割合が増えていく。そうした人口が増えれば社会不安も増大し、景気だけでなく治安や風土もいずれは悪化する可能性がある。

 富が資本所得に傾きつつある時代に、本当に「頑張れば報われる社会」というものは可能なのだろうか。(編集担当:久保田雄城)