廃炉続くも電力会社と地元経済の思惑絡み、見通し不能な原発の今後

2015年04月05日 14:51

 3月17日、福井県にある3基の原発の廃炉が正式に決定した。老朽化した原発が次々と廃炉される中、鹿児島県の川内原発のように再稼働に踏みきるケースも少なくない。福島の事故以来、脱原発の気運が高まったかと見えるが、政府と各電力会社はむしろ再稼働と新設への展望を必死に開こうとしているようだ。さらなる問題は、原発のある地元住民の意向である。原発はすでに日々の生活に根付いており、その恩恵を抜きにした地域振興は今さら考えられないというのが、大半の住民たちの捉え方だ。

 原発が建てば、国から多額の交付金が下り、目玉となる公共事業を立ち上げることもできる。工場、道路の建設で仕事も増える。他地域からも数多の人々が流入し、小売業や飲食店も繁盛する。発電所のみでなく警備など関連雇用も多数発生し、零細な漁業や農業よりはるかに安定したよい収入源となる。原発が地域振興に貢献すると推進派が訴えるのは、そんな経済効果による。しかし一方で、若い後継者が原発関係へと就職してしまい、地場産業の退廃にますます拍車が掛かっているのだ。交付金の使途は公共事業に限られており、住民の希望は反映されない。美しい海浜を利用した観光産業が原発により衰退した事例もある。地域住民はますます原発依存を強め、自らの力で町の活性化に立ち上がる気風は根こそぎ奪われていく。これでは、原発が地域の発展に役立つとはとても言えないだろう。

 天下り関係者を抱える各電力会社は、原発のコスト安やエコ効果を再三強調してきた。火力や水力など他の電源に比し、確かに一定発電量に必要な燃料重量は、原発の濃縮ウランが最も少なくて済む。しかし公表されている原発のコスト費用「発電1キロワット当たり5.3円」という数値には、例えば立地に要する交付金支給や、原発に不可欠な揚水発電にかかる費用はなぜか含まれていない。火力と違いCO2を発生させず、地球環境にもよいと言うが、鉱石ウランから濃縮ウランに加工する過程で莫大なCO2を発生させている事実にはあまり触れられない。

 原発推進に固執する政府にとって、地元民の原発依存の生活感情は格好の切り札となる。最近では、原発立地の町でも原発に頼らない地域振興が可能だと説く専門家が増え、書籍も目に付くようになった。原発問題の本質を見誤らぬためにも、地元産業復興の確固たる指針とモデル事例の一刻も早い提示が求められる。(編集担当:久保田雄城)