2014年にASEANシフトを本格化したイオン〈8267〉が、ベトナムで攻勢をかけている。先行する地場のコープマート、フランス系のビッグC、ドイツ系のメトロなどを追撃する形だ。
ベトナムは9000万人以上の人口を擁し、平均年齢が30歳以下という有望な消費市場だ。ところが、ベトナム戦争、カンボジア・ベトナム戦争、中越戦争と戦火が続き、国が落ち着いたのは90年代に入ってから。07年WTOに加盟、外資の小売流通業参入が緩和され、進出の環境がようやく整った。
イオンは、昨年1月にショッピングセンター1号店「タンフーセラドン」をオープン、初日の来場者数は15万人を記録した。11月に開店した2号店「ビンズオンキャナリー」も初日に13万人が訪れた。
イオンでは、店内に桜の花や竹をあしらったオブジェを飾るなど日本のイメージを前面に出し、高品質をアピールしている。そして、従来のベトナム小売業にはない工夫をしている。イオンベトナム社長の西峠泰男氏は、ベトナムではまだ馴染みがない母の日、ハロウィーン、クリスマス、バレンタインデーといった提案を仕掛けた。
また、安心して子供が遊べる場所を設けることで、滞在型ショッピング客をつかむことに成功した。例えば、2号店「ビンズオンキャナリー」の2階には子ども向けゲームセンター「プレイタイム」、3階には遊戯施設「モーリーファンタジー」を設けた。
さらにイオンはベトナムで攻勢に出るため、1月にベトナムでスーパーを展開する「ファースト・ベトナム」と「ドンフン」と資本業務提携すると発表した。ハノイ市でスーパー「FIVIMART」を20店展開する「ファースト・ベトナム」は、需要に即した生鮮食品、加工品などの品ぞろえと、炒め物や煮物といった献立に合わせたセット商品の提案などの商品企画力に定評がある。一方、ホーチミン市を中心にスーパー「CITIMART」を27店経営する「ドンフン」は、生鮮食品の鮮度の良さ、量り売りやカットフルーツの充実など、きめの細かい品ぞろえが特徴とされている。
イオンは、この南北2大都市に強い事業基盤を持ち、地域ごとに異なる顧客ニーズを熟知する2社との提携することにより、優位性を確保しようとしている。
今年秋にはハノイに3号店を出し、20年までに20カ所に開業する方針だ。(編集担当:久保田雄城)