中国の化学メーカーである国営企業の中国化工集団公司(ケムチャイナ)は3月22日、イタリアのタイヤメーカー大手ピレリ(PIRELLI)社を買収することで合意したという。イタリアの製造業を代表する企業のひとつが中国勢の手にわたることになる。巨費を投じてブランド力と技術力を手に入れて、一気に世界市場に打って出る構えか?
中国化工集団公司のタイヤ製造部門がまず、ピレリ株26.2%を持ち株会社カムフィンから取得。残りのピレリ社株に対してTOB(株式公開買い付け)が実施される。カムフィンの声明によると、中国の国有企業が経営権を掌握し、カムフィン投資家が一部を保有する企業がTOBを実施。カムフィン投資家にはピレリのマルコ・トロンケッティ・プロヴェーラ会長、イタリアの銀行ウニクレディト 、インテサ・サンパオロ 、ロシア国営石油会社ロスネフチが含まれる。
提示額は1株当たり15ユーロ。2014年末時点で抱える約10億ユーロの純負債を除き、ピレリを71億ユーロ(77億ドル)と評価した。カムフィンの声明によると、ピレリのトラック・商業タイヤ事業はケムチャイナ傘下で上場するタイヤ製造会社・風神輸胎に統合される。コストダウンを図りながら生産量を倍増させて価格競争力で世界市場を狙う。
ピレリタイヤは過去1950年代、80年代にF1・GPにタイヤを供給しており、2011年からもF1・GPにタイヤを供給する唯一のサプライヤーだ。これまで、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニなどのスーパーカー&スポーツカーの専用タイヤをOE生産して知名度とブランド力を上げてきた。日本でも1980年代にピレリは、スポーティな指向のドライバー&ユーザーに一流ブランドと認知され「P7」「P700」などのスポーツタイヤに憧れたものだ。
ピレリ社のモータースポーツディレクター、ポール・ヘンベリー氏は、3月27日から開催されたF1マレーシアGPで会見し、「我々の考え方は全く変わらない。F1は中長期的に関与するプロジェクトであると考えており、今後もこのスポーツに参戦し続ける。ピレリにとってモータースポーツは重要な要素だ。楽しむためにF1に参戦しているわけではなく、ビジネス上の決定に基づいて活動している。ブランドの面で市場での存在感に大きな効果がある。我々は今の活動を続けていきたいと考えている」と述べた。
ピレリの現在のF1契約は2016年末まで。今年のシーズン中にF1公式サプライヤーに関する入札が行なわれ、2017年以降のF1レース用タイヤの供給体制が決まる予定だ。(編集担当:吉田恒)