世界のタイヤ市場に打って出る中国企業

2015年03月31日 07:50

 中国の国有企業大手で化学関連を手がける「中国化工集団」は3月23日、イタリアの大手タイヤメーカー「ピレリ」の支配株式を取得することで合意したと発表した。買収総額は約70億ユーロ(約9170億円)に上る。

 同社はピレリの持ち株会社から発行済み株式の26.2%を買い取る。残りの株式についても株式公開買い付け(TOB)で取得し、中国化工の持ち分は最終的に65%程度になる見通し。

 中国化工集団は、2004年に旧化学工業省傘下の国有企業を再編して設立された。化学工業原料、ゴム、プラスチックなどの分野で事業展開しており、売上高は2440億元(13年12月期)に達している。中国化工集団が傘下に抱えているのが「風神タイヤ」だ。

 今回の大型買収の狙いは、風神タイヤが世界のタイヤ市場に本格的に乗り出すことにあると見られている。中国政府が進める「走出去(海外に打って出よう)」戦略に沿った動きだ。

 世界のタイヤ市場では、ブリヂストン〈5108〉、ミシュラン、グッドイヤーなどが大きなシェアを占めている。ところが、中国ではタイヤ製造企業が550社以上もあり、業界の集約が進んでいない。こうした中で、風神タイヤは中国タイヤ市場での地位を固め、海外進出を加速させようとしている。すでに同社は、欧州と米国に販売子会社を設立している。今回の買収によって、風神タイヤの競争力は一気に高まる。

 自動車レース「F1」へのタイヤ供給で知られるピレリの2014年の売上高は、約60.2億ユーロ。風神タイヤは、このピレリの高いブランド力と技術力を手に入れることができる。また、欧州市場にもアクセスしやすくなるだけでなく、新興国進出でもピレリのブランド力は武器となる。

 一方、ピレリは風神タイヤと協力することによって中国市場を開拓し、東南アジアやアフリカ、南米などへの進出を加速すると見られている。(編集担当:久保田雄城)