米国バイオテクノロジー企業「バイオジェン」は3月20日、アルツハイマー病の同社治験薬が、患者の認知機能の低下を大きく遅らせることに成功したと発表した。同社は、フランスで開かれた医学会で、軽度から中程度の初期アルツハイマー病患者166人を対象とした初期段階の治験で、同社治験薬「BIIB037」(一般名:アデュカヌマブ)が脳内のアミロイドβ(Aβ)を減少させ、認知低下の度合いも和らげたと説明した。同社は、薬の承認申請につながる大規模な治験の実施を計画している。
今回のバイオジェンの発表について、投資銀行ロバート・ベアードの上級アナリスト、クリストファー・レイモンド氏は「この試験結果は、アルツハイマー病関連で、かなり印象深いものだ」と述べている。未だアルツハイマー病の根本治療薬は開発されておらず、市場では同社に対する期待感が一気に高まった。
3月20日の米株式市場で、バイオジェン株は前日比9.3%高の474.03ドルに急騰。一時は1991年の新規株式公開以来の480.18ドルという高値を付けた。バイオジェンと共同開発・共同販促に係るオプション権を保有するエーザイ<4523>も、3月23日に前営業日比1500円(21%)高の8748円でストップ高となった。
1978年に創設されたバイオジェンは、中枢神経系疾患を中心とした重篤な疾患を治療する生物学的製剤の研究、開発、製造、販売を行っており、脳、脊髄、視神経などに病変が起こる難病「多発性硬化症」などの治療薬製造で知られる。バイオジェンの2015年売上高は112億ドルに達すると予想されている。
アルツハイマー病の原因についてはいくつかの説があるが、厚生労働省では「アミロイドβ(Aβ)にその原因を求める考えが主流になっています」と説明している。ただ、「このAβ中心説に対して、神経原線維変化を構成するリン酸化されたタウに注目する立場も有力です」とも述べている。
果たしてバイオジェンの新薬は承認されるのか。世界が注視している。(編集担当:久保田雄城)