イランに対する経済制裁の解除を見越して、各国企業がイラン市場に熱い視線を送っている。4月2日に米欧など6カ国とイランが核問題の包括的解決に向けた枠組みで合意したことを受け、経済制裁解除が近づきつつあると見られている。
すでに中国の聯想集団(レノボグループ)がテヘランでイベントを開催、イランの小売業者数十社を招待している。アップルもイラン企業と交渉に入っているか。昨年暮れには、ヒューレット・パッカード子会社のドバイ営業所幹部がイランの販売業者らと会合を持ったとも伝えられている。石油や自動車などの分野でも、イランと西側の一部大口投資家との間で交渉が始まっていると報じられている。
米国のイラン制裁は20年に及ぶ。米国は、1995年の大統領令で米企業によるイランとの取引を禁止し、96年にイラン向け石油・ガス開発投資を行った外国企業に対し制裁を課す対イラン・リビア制裁法(ILSA)を成立させた。2006年にはILSAを継承する「イラン自由支援法案(IFSA)」が成立。そして、オバマ大統領は、10年にIFSAを実質的に強化した対イラン制裁法に署名した。これにより、エネルギー分野への投資だけではなく、イランの石油精製に資する商品・サービスの提供や、イランのテロ活動、大量破壊兵器を促進するイラン銀行などと取引を行う外国の銀行が制裁対象となった。さらに、11年12月にはイラン中央銀行などと相当の金融取引を行った外国金融機関に対し、米国での銀行間決済を禁止する規定を含む米国防授権法が成立した。
イラン進出の足かせとなっていた経済制裁が解除されれば、手つかずの市場への進出ラッシュとなるだろう。イランは豊富な資源のみならず、8000万人近くの人口を抱え、消費市場としても有望だ。これまでも消費財分野などは制裁対象となっておらず、フランスの食品大手ダノンがイランでミネラルウォーターの生産を行っている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』(4月7日)によれば、イランとの取引を望む多国籍企業に助言を行っているドバイのコンサルタント会社のアリ・ボルハニ氏は「イランは石油・天然ガスだけではない多面的な経済国家であり、制裁が解除されれば、最も刺激的なフロンティア市場になろう」と語っている。未開拓の市場への参入競争が、いよいよ激しくなりそうだ。(編集担当:久保田雄城)