地方銀行の経営が一段と厳しさを増している。地場産業の先細りや人口減少で顧客や預金が減少し、他行との低金利競争にも巻き込まれているからだ。そんな中、単なるお金の貸し借りばかりでなく、地元経済の活性化に貢献しつつ収益を底上げしようという活動が、全国の地銀で見られ始めた。安倍政権のスローガン“地方創生”とも歩調を合わせるこれらの動きに注目が集まっている。
地方創生に向けた取り組みの一つには、地場産業を後押しするものがある。取引先の海外進出を本格的に支援できる人材を育てるため、総合職全員に海外研修を行う伊予銀行<8385>(愛媛)、新商品の開発に挑む事業者を支援する地方創生ファンドを設立した西京銀行(山口)の事例などがある。
もう一つは、地方の人口減少への対応策が挙げられる。みちのく銀行<8350>(青森)では、他県からの移住や子育てを支援すべく低金利での融資を行っている。弘前市が認定した子育て応援企業への融資、あるいは移住の際に要する住宅リフォームのローン金利などが優遇される。また岩手銀行<8345>(岩手)は、お見合い相手紹介サービス業者と提携、後継者の結婚相手探しに苦労する地元の企業経営者の相談に親身に応じている。
また近年特に、有能な人材としての女性たちの潜在可能性が着目されているが、その女性の活躍を推進する動きも活発だ。百十四銀行<8386>(香川)では、女性行員だけで“瀬戸内モニターガールズ”を結成し、女性の意見を観光産業の促進や商品開発に活かす取り組みを始めている。また北都銀行(秋田)も2012年、女性管理職比率を18年3月末までに30パーセントへ引き上げるとの目標を掲げており、昨年の時点で26.7パーセントに達しているなど、女性を重要ポストへ登用すべく具体的な数値目標を掲げる地銀も増え始めた。
もう片方の目立つ動きとしては、都銀や地銀など銀行同士の連合、あるいは再編を視野に入れる動向がある。三井住友信託銀行<8309>は、すでに横浜銀行<8332>(神奈川)との協同出資で新会社設立を決めているが、それ以外の地銀とも提携していく考えを示している。九州では、肥後銀行<8394>(熊本)と鹿児島銀行<8390>が経営統合を決めており、10月には「九州ファイナンシャルグループ」を設立して両行が傘下に入る予定。また、地元のお勧め食材をスーパーや百貨店などに売り込む商談会を各地の地銀が協同で主催するなど、地方支援に向けた緩やかな連携も模索され始めた。
地元経済の浮沈が収益に直結する地方銀行。地域の活性化を力強くリードすることができるか、期待される。(編集担当:久保田雄城)